2019年7月23日(火)

本当に15年ぶりの円高? 外貨投資の誤解(6)
編集委員 田村正之

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2010/8/30 7:00
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今度はグラフBを見てほしい。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・債券為替調査部長が1990年以降の約20年間を対象にして作成したもので、インフレ率が高い通貨ほど、長期的には大きく下落しがちなことがわかる。

例えば90年以降、米国の消費者物価は約7割も上昇しているのに対し、日本は1割弱で、6割強も差がある。

もしも為替相場が20年前と同じだったとしよう。例えば日本企業が国内で材料を調達して米国に輸出するとしたら、7割も材料が上昇した米国企業に比べて、圧倒的に競争力で有利になってしまう。「そんな状態が放置されるはずがない」(佐々木さん)ことから、長期的にはインフレ率が高い通貨は下落して(ドル安になって)調整されるというわけだ。

このような考え方で2国間のインフレを調整して算出したものを「実質レート」という。グラフAで示したもう1本の線、「実質実効レート」は、多くの国との総合的な関係(実効レート)をインフレ率の違いも調整(実質レート)したうえで示したもの。いわば「円の本当の実力」だ。これは日本銀行のサイトで誰でも見ることができる。

前置きが長くなったが、グラフAの「実質実効レート」の線(数字が大きいほど円高)を見ると、さほどの円高ではなく、むしろ2004~06年に大幅な円安だったのが、修正されているだけのように見える。

そして「本当の輸出競争力は、名目レートではなく、実質実効レートに左右される」(立正大学の林康史教授)。「15年ぶりの円高」と騒がれながらも、企業の間で95年当時ほどには悲鳴が聞こえてこないのは、こうした背景もありそうだ。

次ページ→「国内のデフレを止めることこそ必要」

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