「国内の料金で海外で無線データ通信を」、日本通信がSprintと携帯電話網を接続
日本通信は2010年3月23日、米国の携帯電話事業者であるSprintと契約を締結し、Sprintの携帯電話網とレイヤー2接続すると発表した。Sprintは米国3位の携帯電話事業者。この締結により、日本通信はMVNOとしてSprintの携帯電話網を利用できるようになる。
一般に携帯電話通信網を通信の「土管」として借り受けて、別のサービスを提供する事業者を「MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)」と呼ぶ。日本通信はMVNOとして自社でデータ通信を中心としたサービスを展開するほか、借りた携帯電話網をさらに別の企業に貸し出し、MVNOとなるためのインフラを提供するMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)として活動している。
レイヤー2接続のMVNOであれば、セッションの管理やIPアドレスの割り当てなど、細かな制御が可能なサービスを提供できる。2009年3月に日本通信はNTTドコモとのレイヤー2接続が完了し、随時チャージが可能なデータ通信サービス「ドッチーカ」を提供しているほか、年額固定のデータ通信が可能なSIMカードの提供を2010年4月に開始すると発表している。
レイヤー2でSprintの電話網と接続することにより、「日本と米国を同じ一つのエリアとしてサービスを提供する」(代表取締役社長の三田聖二氏)。具体的には日本と米国で同一の料金プランでサービスを提供できる。今後2010年内をめどに欧州、2011年内を目標に中国でもサービスを提供する計画であるという。具体的には各地域の携帯電話事業者とレイヤー2接続を実現し、これに接続する同社のプラットフォームを完成させる。さらに、1枚で各サービスを利用可能な「G1-SIM」を開発する、単一の料金プランを提供するなどを考えている。
具体的にSprintと検討しているサービスとしては、ドッチーカの米国版の提供である。これは日本版と相互接続が可能で、日本のユーザーも米国で同一料金で利用できるようになるという。これを2010年度の第2四半期中に実現したいとしている。端末に関してはSprintの網がEV-DO、NTTドコモの網がW-CDMAであるため、現時点では両方式に対応した携帯電話機は存在しない。「当面は共通の端末ではなく、各方式に対応した端末を利用することになるかもしれない。ただ一部パソコンでは両方式に対応した通信モジュールの搭載が始まっており、今後広がっていくと期待している」(常務取締役CMOの福田尚久氏)。
(日経WinPC 北郷達郎)
[PC Online 2010年3月23日掲載]