この父ありて 作家 石牟礼道子(7)
命つなぎとめるために書く 梯久美子
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10代から短歌を作っていた道子は、結婚と出産をへた25歳のとき、熊本の短歌結社『南風』に入会する。年に2回開かれる歌会に、小学校入学前の息子をつれて、水俣から参加した。
何か月もかけて時間と費用を捻出し、家人から咎(とが)められないよう家事万端を整えて出かけたが、近所の目は厳しかった。
〈家をほったらかして、わざわざ汽車に乗り日を費して、歌の何のと言って一家の主婦が熊本にまで出かけてゆくとは何事ぞ...