春秋
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吉田健一の「私の食物誌」は、読んでいるとお腹(なか)のすく本である。この作家特有の文体でさまざまな土地の食べものが称揚されているが、白眉は「広島の牡蠣(かき)」だろう。いわく「広島のを食べていると何か海が口の中にある感じがする」。いまから半世紀も前の随筆だ。
▼「牡蠣というのがもともと消化剤に似た役目をするものらしくてこの牡蠣を二、三十食べるのは何でもない」というから恐れ入る。もっとも、新鮮なやつ...
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