この父ありて 作家・歌人 辺見じゅん(3)
哀感と孤独がつないだ2人 梯久美子
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辺見じゅんの文学的出発は小説だった。1964(昭和39)年、25歳になる年に本名の清水眞弓名義で『花冷え』を刊行している。前年に結婚し、姓が角川から清水に変わっていた。
〈その作品を読んだ父から、「こんな小説の一篇(ぺん)位は、誰だって書ける。もっと人生を知ってから書きなさい」/一喝されて以来、私は一切書かなくなった〉(「夢ありて楽し」)
これ以降、彼女は小説を一篇も書いていない。ノンフィクション...