/

この記事は会員限定です

危うしリサイクル先進国

数値「水増し」の日本、むしろ環境劣等生?

[有料会員限定]

日経電子版Pro会員の大木 将裕さまから有料会員限定記事がギフトされました。日経電子版Proとは?

ごみ問題への対応力がグローバルな製品競争力を左右する条件になり始めた。起点は「循環経済(サーキュラーエコノミー)」という考え方だ。このほど欧州が打ち出したスマートフォン充電器の規格統一という突然の方針発表には、見逃してはいけない新たな関門の存在がうかがえる。日本企業はクリーンな製品競争に勝ち残れるのか。

スマホ充電器統一 突然の欧州方針なぜ

欧州委員会は9月、域内で販売するスマホなどの充電端子を「USBタイプC」に統一するとした法案を公表した。アップルの「iPhone」は独自規格を採用しており、デジタル機器の覇権争いで先手を打ったと受け止められた。だが同委がツイッターで書き込んだのは「引き出しに充電器がたくさん入っていませんか」。規格統一の大きな狙いの一つは「ごみの削減」と主張した。

欧州は急速に普及したスマホやタブレット端末に使う充電器の規格が3つ以上乱立し、年間約1万1千トンが「E-WASTE」(電子ごみ)になっているとにらむ。規格統一で1つの充電器を使い回せるようになればごみは減る。2億5000万ユーロ(約320億円)の消費者支出の抑制にもつながるとみている。

循環経済で主導権を握り、製品のあり方や消費者の行動を変えていく様子は気候変動対策と構図は同じだ。欧州はディーゼル車やガソリン車の2035年以降の新車販売禁止や、石炭火力発電停止などに踏み込んだ。循環経済でも先行し、欧州企業が活躍できる市場を創造しようとしている。ごみ削減やリサイクルは「環境対策」であり「経済対策」といえる。

欧州の強気の背景には域内のリサイクル率の高さがある。廃プラスチックのリサイクル率でスペインは42%、ドイツは38%、EU平均は32%だ。いわゆる「ごみ」のリサイクル率でもドイツは67%。オランダなども高い。国立環境研究所の河井紘輔主任研究員は「欧州は1999年制定の埋め立てを段階的に減らす指令が契機になった」と分析する。こうして早くからリサイクルにかじを切った。

日本は埋め立て地が少ない点では欧州と同じだが、最終処分量を減らすために選んだのが焼却処理だった。日本は焼却の技術に優れる。廃プラ処理では熱エネルギーを活用して「リサイクル率」は8割と説明してきた。だが燃やせば温暖化ガスが出る。欧州などでは「エネルギー利用」などとされ、リサイクルの定義に当てはまらない。国際基準では、日本のリサイクル率は25%にまで落ちる。ごみでも20%程度にとどまる。

欧州の一部の国では、リサイクルが資源枯渇や自然災害に備える安全保障の問題だとの認識が浸透している。プラスチックは衛生的との考えから1950年代に本格的な利用が始まり、2015年の排出量は3億トンにもなる。廃プラが野生生物の胃袋から見つかるなど環境汚染の深刻さが認識される一方で、生活に欠かせない素材となった。

英国の財団によれば、世界中がプラスチックを使い続けると石油消費量に占めるプラスチック利用のシェアが14年の6%から50年には2割になり、石油への依存度が高まる。焼却処分すれば、温暖化ガスの累積排出量(上限)に占める割合も14年の1%が50年に15%に達する。

焼却熱の回収「リサイクルでない」

欧州委員会は「欧州グリーンディール」の一環で、主要なプラスチック製品に再生材料の使用拡大を求める方針だ。欧州の産業団体プラスチックス・ヨーロッパも歓迎する。欧州内では電気自動車(EV)用電池に再生素材の使用を義務づけるべきだとの意見もある。

15年に温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が採択され、温暖化ガスの排出に厳しい目が向けられると焼却処分も問題化した。廃プラについて小泉進次郎環境相は6月の記者会見で「焼却を海外ではリサイクルとは言わない」と語った。廃プラを資源として輸入していた中国や東南アジアが17年ごろから環境問題を理由に輸入の規制を始め、追い打ちをかける。「日本は処理のあり方を根本から見直す必要がある」(河井主任研究員)

欧州で新たなルールが施行されれば、日本企業にも影響が出る。手をこまぬいてはいられない。経団連などは3月、循環経済パートナーシップを立ち上げた。ソニーグループがヘッドホンの包装材をプラスチックから紙に置き換えた例や、岩谷産業リコーが植物原料の食品トレーを開発する取り組みなどを共に学ぶ。国際シンクタンクによれば、30年には循環経済の規模は540兆円にまで膨らむ。日本が出遅れを挽回できるかは官民それぞれの意識改革にかかっている。

記事はいかがでしたか?

電子版に登録すると、さらにビジネスで役立つ記事をお読みいただけます。会員プランを見る

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン