作家 門井慶喜(1)
小学校の卒業ビデオ
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小学6年生のとき転校した。父が家を建てて引っ越したからである。
転校先で多少いじめを受けたのは、まあ一種の通過儀礼かと今なら笑いとばすこともできるけれど、当時は心が不安定だったのだろう、いわゆる委員会活動には放送委員をえらんだ。
顧問が担任の先生だったのだ。クラスで唯一の味方だった。冗談の好きな、たぶん20代の男の先生。
放送委員の大きな仕事は、給食の時間にある。週に一度、放送室へ行って、校内の情...
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