32年前の夕食風景 作家 南木佳士
[有料会員限定]
食卓の置かれた部屋の壁に地味な額縁に入った1枚のモノクロ写真が掛けてある。小さな男の子が2人とひげづらの父親、童顔の母親が写っており、炬燵(こたつ)の上に並べられたじゃがいもの天ぷらなどの質素な田舎料理を食べている。どこにでもありそうな写真だが、構図やピントが決まっており、素人が適当にセルフタイマーで撮ったものでないらしいことはすぐわかる。
この写真は32年前の1月、第100回芥川賞発表を間近に控...
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
残り472文字