江戸染まぬ 青山文平著
にじみだす市井の人の心情
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ラスト3行に物語の全ての思いを凝縮させた前作の長編『跳ぶ男』と同様、本書の7つの小編も終盤に向かって見事に収束していく。しばらくページをめくってもどんなオチが待っているのか想像もつかないストーリーテリングにはうならされる。
深く心を動かされるのは、登場人物の心情の揺らぎを我がことのように感じられるからだ。7編のどの主人公についても日常が丁寧に描かれる。セリフや地の文の行間からは彼らの心情がじわりと...
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