カミュから遠く離れて
坂井修一
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コロナ禍の中、カミュの『ペスト』が読まれているという。トランプが大統領になったときは、オーウェルの『一九八四年』だった。ディストピアを襲う感染症。今の世界を象徴する2冊とも見える。
もっとも、21世紀の現実は、小説よりもさらに苛酷(かこく)かもしれない。
オーウェルの描く未来にはスマホやGPSはない。誰かを監視するといっても、隠しカメラや盗聴器を使う。1960年代のスパイ映画と大差ない、なんとも原...
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