仏文学者 宮下志朗(5)
古典の「翻訳者」
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それにしても、ずいぶん翻訳をした。最初はもっぱら研究書の共訳、やがて単独訳もできるようになり、文学やエッセイなども手がける。そして還暦近くからは、古典の新訳に多大の時間を費やした。ラブレーとモンテーニュをほぼ同時期にやったのだから、まさに常在戦場の心もちだった。 ラブレーの渡辺一夫訳、『エセー』の関根秀雄訳、共に不動の名訳である。でも、いかなる名訳も、やがて古色を帯びる。骨董品なら愛(め)でていれ...
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