今東光「小説河内風土記」 大阪府八尾市
朝まだ暗いうちに八尾中にひびき渡るような音立てて荷車が通る
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大阪・奈良県境にある生駒山系の西側、大阪府八尾市の山裾では江戸時代から菊や生け花に使う切り枝用の樹木の栽培が盛んだった。4月中旬に訪れると、純白の梅花ウツギや伸びた黄色い菜の花などが所々に残り、遅咲きの山桜や新緑の木々に覆われた山の姿と合わさって、のどかな春らしい風景が出現していた。
今東光は八尾・河内の自然や歴史、風俗、暮らしや人情を描いた小説を数多く著した。「河内もの」と呼ばれるこれらの作品...