中村彰彦「二つの山河」 徳島・鳴門市
「かれらも祖国のために戦ったのだから」
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大正時代、徳島県鳴門市にドイツ人俘虜(ふりょ)(捕虜)の収容所があった。第1次世界大戦中、中国から送られたドイツ兵捕虜約5千人のうち約1千人が暮らした「板東俘虜収容所」だ。ここでは会津出身の松江豊寿(とよひさ)所長の方針で国際法を守り、人道的な施設運営が行われた。捕虜は音楽、演劇、スポーツ、商工業などの活動を行い、地域住民とも交流して西洋の進んだ技術を教えた。作者はこの「奇跡の収容所」の実態と、...