国立障害者リハビリテーションセンターなどの研究チームが高齢者や認知機能の衰えた人に役立つ生活支援システムを開発した。ロボットがタイミング良く話しかけてその日の予定やこれから取り組まなければならない仕事や作業を思い出してもらう。一人暮らしで話し相手がいない高齢者などに有効なことを確認した。介護サービスと連携して実用化を目指す。
「そろそろデイサービスに出かけるんだよね、トイレに行ったらどう?」。ロボットに問いかけられた伊藤はなさん(97、仮名)は「わかった、行ってみるね」と立ち上がった――。
元気な伊藤さんは一人暮らし。伊藤さんは24日間にわたり、ロボットと生活してみた。この実験は、国立障害者リハビリテーションセンターがNECなどと協力して実施した。
実験に使ったロボットはNECが開発した小型ロボット「PaPeRo(パペロ)」。身長は38センチメートル、体重は6.5キログラム。画像センサーや音声認識機能などを搭載しており、簡単な会話をこなせる。2005年の愛知万博では、子どもの遊び相手として半年間活用されるほど高い安全性を備えている。国立障害者リハビリテーションセンターなどはパペロがきちんと支援できるように、高齢者に呼びかけて注意を喚起したり、相手の返答内容からきちんと理解しているかどうかを判別したりするプログラムを組み込んだ。

NECの小型ロボット「PaPeRo(パペロ)」
実験では、パペロのアドバイスで高齢者が外出の予定に気付いたり、来客を玄関できちんと迎えたりすることができた。「9割以上の正確さでロボットとコミュニケーションがとれた」と、国立障害者リハビリテーションセンターの井上剛伸・部長は自信を見せる。
パペロはこれまで多数の実験をこなしてきたが、一人暮らしの高齢者や認知機能の衰えた人などの生活に役立つことが確認できたのは今回が初めてという。パペロの開発に取り組んできたNECの大中慎一マネージャーは「ロボットと認知機能の衰えた人がコミュニケーションをとれたことに驚いた。生活を支援していける可能性が見えてきた」と期待を語る。
ただ、課題はある。1つはロボットの話し方が高齢者には聞き取りにくいこと。会話のタイミングや話す内容を、相手に応じて個別に変える必要もあるという。NECは引き続き改良に取り組む考えだ。研究チームは近く一人暮らしの高齢者を対象にした大規模実証試験を始める計画で、結果が注目される。ロボットが家族になる日は意外に近いのかもしれない。
(科学技術部 長倉克枝)
ロボット、生活支援、介護サービス、NEC、高齢者、一人暮らし
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