米ラスベガスの家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で、ルネサスエレクトロニクスがUSBメモリー大の超小型セットトップボックス(STB)の試作機を公開した。この装置は、持ち運びが容易でテレビなどにコードレスでつながるSTBとして、クラウドに蓄積された映像の利用を容易にする。コンテンツサービスや映像マーケティングを大きく変える可能性を秘めている。
■超小型装置をテレビのHDMI端子に接続
公開された小型STBは本体にHDMIインターフェースを持ち、テレビなどのHDMI端子に接続するだけでフルHD映像を再生できる。本体に内蔵する無線LAN機能を使って、家庭内のホームサーバーに無線で接続したり、インターネット経由でコンテンツをダウンロードしたりして、映像を再生するプレイヤーとして利用できる。
評価ボード扱いである展示機は、コンテンツを保存するためのメモリーを本体に内蔵しているが、製品版ではコンテンツのデータ容量やDRM(デジタル著作権管理)機能の有無などによってSDカードなどの外部メモリーも選択できるようにする。携帯機器向けの高速映像伝送用インターフェース規格「MHL」対応版もある。価格は「企業が一般ユーザーに配布できるくらいのところを目指す」(説明員)という。
デモでは同装置をテレビのHDMI端子に差し込んで、1対1で認証されたスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)のアプリから無線LAN経由でリモコン操作していた。操作レスポンスに違和感はなく快適そのもので、表示されるフルHDの画質にも問題はない。
STBを持ち運び自在にしたこの装置は、「映像クラウドサービス」の本格展開を先取りする。これはクラウドに置いた映像データを様々な場所にあるスクリーンに、通信ネットワーク経由で自在に配信するといった近未来のサービス。ただしネットワークの物理的なカバーエリアとサービス料金などの課題から、実現にはまだ時間がかかりそうだ。
■「STBを個人が持ち歩く」ことのインパクト
個人がハードディスクを持ち歩くという発想から始まった米アップルの「iPod」が、「iPhone」の時代になって3G(第3世代携帯電話)通信機能を搭載してもその考え方が変わらないように、映像配信を一足飛びにクラウドに移行させるのは難しい。
そう考えると、ルネサスの「STBをパーソナルに持ち歩く」発想は非常に斬新でインパクトがある。同様の機能はスマホだけでもできるが、スマホがSTBを操作するリモコンを兼ねる必要があり、使い勝手の点などから現実味がない。
この装置は超小型サイズながらハードウエアのスペックは、従来のSTBやタブレット端末、スマートフォンと変わらない。既存のケーブルテレビやIPTVのSTB、タブレット端末とシステム連携させれば、この装置をユーザーが持ち歩くことで、自宅ケーブルテレビで見た映画の続きを移動中のタブレット端末や出張先のホテルで見るといったように、複数のスクリーンを使い分けた映像クラウドサービスを実現できる。会社や学校で入手してきた映像情報を自宅のテレビで見ることも可能だ。さらにデジタルサイネージのSTBとして利用すれば、テレビを簡単にサイネージ端末に変えられる。
こういったマルチスクリーン型のサービスは、家やオフィス、学校、街中のデジタルサイネージといった様々なスクリーンの間を、人が回遊移動するからこそ有効になる。移動する当人がSTBを持ち歩いてくれればさらに都合がよい。今後サービスを展開するには、ユーザーにSTBを持ち歩く必然性を伝え、メリットを提供することが重要となる。
ルネサスエレクトロニクス、STB、iPhone、iPod、アップル、セットトップボックス
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