重要な機密情報がネットワークを行き交うクラウド時代。サイバー攻撃がもたらす被害は物理的なテロや戦争に匹敵する恐れも出てきた。サイバー攻撃の背景や防ぐポイントは何か。米国で前線に立つ情報セキュリティー企業の経営者2人に聞いた。(シリコンバレー=岡田信行)
一人目は、米中央情報局(CIA)系のベンチャー投資会社も投資する技術ベンチャー、ファイア・アイ(カリフォルニア州)のアシャー・アジズ最高経営責任者(CEO)。同社は重大なサイバー攻撃の頻発を受け、従来の「防御」を重視した手段にとどまらないセキュリティー技術を開発している。通信状況を分析して異常を検知し、情報を守るより積極的な手法だ。
――サイバー攻撃がなぜ増えているのか。
「攻撃には3つのタイプがある。1つはハッカーによるもの。自分たちの存在や政治的な主張などを訴えるために不正侵入する。この種の攻撃は目立つが、いたずらが多く、実害は少ない」
「2番目はサイバー犯罪。東欧やロシア、ウクライナなどに多く、標的を絞って、組織的で、洗練された攻撃をしかけてくる。個人情報や産業機密などを盗み出し、金銭的利益を得るのが目的だ。このタイプの攻撃は一番多く、深刻だ」
「3番目は国家による攻撃だ。ロシア、中国、米国などは“サイバー攻撃力”を高めており、注目を集めている。このサイバー犯罪と国家による攻撃は実際に大きな被害を引き起こす可能性がある点で深刻だ」。
■日本企業の問題意識低い
――サイバー攻撃から自らを守るにはどうしたらよいか。
「かつて戦さといえば、地上で剣で戦っていたのが、近代化が進んで、飛行機が開発されて空から爆撃できるようになった。戦い方は変わった。防御に主眼を置いた従来の考え方はもはや通用しない。不正を働いたプログラムのサンプルを集め、照合することで異常を検知する従来の手法では、急増する新しい脅威に対応が追いつかない」
「自分だけは安全、大丈夫という会社、個人は存在しない。どの会社も日々、何らかの攻撃を受けている。事件として報道されるようなものは氷山の一角だ。ほかの攻撃が公にされていないだけで、攻撃は常に存在する。従来の『防御』という考え方では守れない。まず、そうした現状認識が必要だ」
――ファイア・アイは情報をどう守るのか。
「我々は独自のエンジンを使って、不審な通信をキャッチ。不正ソフトを実際に実行して、その状況をみて不正行為を検知する。従来のウイルス対策ソフトのように、不正ソフトのサンプルを使って照合するような仕組みをとっていないため、まだサンプルもないような新種の攻撃でも対応できる」
――課題は何か。
「セキュリティーを向上させるためには、攻撃者よりも優れた技術を開発しなければならない。それが課題だ。非常にチャレンジングだ。しかし、シリコンバレーの良いところはベンチャーキャピタルが資金を供給し、優秀な人材の確保が可能なことだ」
「ここでは優秀なエンジニアが報酬面でも評価される。所属する企業が成功すれば、ストックオプションなどでも報われる。そうした環境がなければ、優秀なエンジニアはハッカーになっていたかもしれない」
――日本のネットセキュリティーをどうみるか。
「日本の企業は1年前まで、攻撃を受けていることを認めようとしなかった。最近は状況が変わってきたが、問題意識に乏しかったように思う。韓国では成功している。大きな顧客がいる。韓国はウイルスやサイバー攻撃が多いからか、問題意識も高いと感じた」
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