電源コードなしに電源を供給するワイヤレス給電技術。その利用拡大に向けた動きがここに来て加速している。これまでは電動歯ブラシやコードレス電話など、限定的な用途にとどまっていたが、2011年夏に対応スマートフォン(スマホ)が登場したのをきっかけに、状況が大きく変わり始めた。数年後には電気自動車への搭載も期待されており、巨大市場が立ち上がる可能性がある。本連載では、ワイヤレス給電技術の今後の展望と進化を追う。
2011年に入り、携帯電話機やスマートフォンを非接触で充電する目的で、ワイヤレス給電[注1]機能を搭載する例が、国内外で相次いでいる。
「やっと出せる」――。NTTドコモは、2011年7月28日に発売したシャープ製のスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」に、ワイヤレス給電による「おくだけ充電」と呼ぶ機能を組み込んだ。SH-13Cの商品企画を担当した滝本真氏(NTTドコモ プロダクト部 第二商品企画担当)は正直な感想を口にした。同社は2003年ごろから、携帯電話機にワイヤレス給電機能を搭載することを目指して研究開発を続けていた[注2]。
米国では、携帯電話事業者で最大手のVerizon Wireless社が「携帯電話機の半数をワイヤレス給電機能に対応させる」と宣言した。既に、台湾HTC社や韓国LG Electronics社など大手携帯電話機メーカーと協力してスマートフォンの開発を進めている。
調査会社の米IHS iSuppli社によれば、ワイヤレス給電装置の市場は2010年は1億2390万米ドル規模だが、2011年は7倍以上の8億8580万米ドルに急増すると予測する(図1)。その後も順調に成長し、「2015年には237億米ドルの巨大市場が生まれる」(同社)と見込む。
ワイヤレス給電装置の市場を牽引(けんいん)するのは、何といってもスマートフォンである。NTTドコモは「2013年には、発売する機種の半分をワイヤレス給電対応にする。2014年には、国内の対応端末は累計1600万台に達するだろう」(同社 プロダクト部 第二商品企画担当部長 プロダクトビジネス推進担当部長兼務の山口文久氏)と、積極的に推進する方針を打ち出した。2011年冬モデルでも複数機種を投入する方針だ。
[注1] ワイヤレス給電とは、電源コードを使わず、無線で電力を伝送する技術。配線や充電端子をなくすことができるため、機器を防水・防塵(ぼうじん)対応にしやすく、故障のリスクを低減できる。
[注2] NTTドコモは2005年にパナソニック モバイルコミュニケーションズと共同で試作機を開発しており、「製品を投入できる段階にあった」(NTTドコモ)。だが、独自規格では普及が難しいと判断し、当時は製品化を断念した経緯がある。
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