
2010年7月16日。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの米Apple社が,異例の釈明会見を開いた。発売からわずか3日で,世界で170万台を出荷したスマートフォンの新機種「iPhone 4」のアンテナ問題についてだ。同社は釈明の場で,他社のスマートフォンを引き合いに出して自らの正当性を主張した。Apple社の主張は妥当なのか。日経エレクトロニクス編集部はそれを確かめるために,専門家の協力を得て受信感度の測定に挑んだ。
「iPhone 4は推奨できない」――。2010年7月12日。米消費者団体が発行するConsumer Reports誌が,iPhone 4の筐体(きょうたい)の左下側面に触れると受信感度が悪化する,いわゆるアンテナ問題に関して声明を出した。「電波の弱い場所でiPhone 4の左下側面の黒いスリット部分を手で触れた場合,接続が完全に途切れるほどに受信感度が著しく低下する。このため,iPhone 4の購入を推奨しない」というものだった(図1)。
Consumer Reports誌は,米国の消費者に強い影響力を持つ。2010年4月には,トヨタ自動車の「LEXUS GX460」などに対して同誌が「購入しないように」と発表したため,トヨタ自動車は慌てて対象車種のリコールを実施したほどだ。今回指摘を受けた米Apple社もたまらず,Consumer Reports誌の発表直後の7月16日に米国で記者会見を開催して,釈明に追われることになった。

会見には,Apple社 CEOのSteve Jobs氏自らが登場して同社の見解を述べた。同氏は「アンテナ問題は他のスマートフォンにもある」という主張を,時間をかけて説明した。具体的には,カナダResearch In Motion(RIM)社製の「BlackBerry Bold 9700」や台湾HTC社製の「DROID Eris」など4機種のスマートフォンを手で持つと,アンテナ・バーの表示数が徐々に減る様子を動画で披露した。さらに,iPhone 4の返品率が従来機種よりも低いことを訴えた。その上で「アンテナ問題の影響を受けているのは一部のユーザーだが,皆に満足してもらうためにケースを無償配布する」という対策を示した。
この会見の終了後,名指しされたRIM社やHTC社は次々と声明を発表した。「自社の失敗に我が社を巻き込むことは容認できない。我々の端末ではケースを使う必要はない」(RIM社)。iPhone 4のアンテナ問題は,業界全体を巻き込んだ論争に発展する様相を見せている。
果たして,Apple社の主張は的を射たものなのか。携帯電話会社の研究所でアンテナなどの研究をしていた経歴を持つ,無線通信を専門とする拓殖大学 准教授の前山利幸氏と,同大学 産学連携研究センター附属電波無響室の協力を得て,iPhone 4のアンテナ問題を検証した。
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