前回、人工知能(AI)は、慶応大学大学院の前野隆司教授が唱える「受動意識仮説」を基に、建設可能であると言い切りました。しかし、「受動意識仮説」そのものについては、例によって「ググッて下さい」とお願いしたままでした。
今も、それが「受動意識仮説」を理解する上で、最も手っ取り早い方法であるという気持ちに変わりありません。ただ一つ抜け落ちていたことがあります。前野教授の主著である「脳はなぜ『心』を作ったのか―『私』の謎を解く受動意識仮説」(2004年 筑摩書房刊)が、最も包括的な解説になっているため、この読みやすく、かつ、分かりやすい本を、紹介すべきでした。
■「受動意識仮説」を実感してみよう
そのおわびとして今回は、「人工知能―番外編」として、「受動意識仮説」を「実感する」方法について述べてみます。今回は連載のインターミッションとして、騙(だま)されたと思って、気楽にお付き合いください。
「受動意識仮説」というのは、ひとことで言うと、私たち人間一人一人が、「私が」という風に主語で表す「意識主体」は、私たちが通常そう感じているような「能動的な主体」ではなく、「受動的な何か」でしかないのではないかという仮説です。「私」は、私の「司令塔」ではなく、私で起こっていることの単なる「観察者」ではないのかという仮説です。
ここで、「私」とかっこでくくられた「私」は、「私の心」だと思って下さい。一方、かっこがつかないままの私は、「私の体」と「私」(=「私の心」)を合わせた全体だと思って下さい。私=「私」(=「私の心」)+「私の体」というわけです。さて、いよいよ「受動意識仮説」を実感する方法です。
まず、そのままあなたの体に、注意を向けてみましょう。何かが見えていますよね。何か音が聞こえていますよね。何か臭(にお)っているかもしれません(場合によっては、何も格別に臭っていないかもしれません)。口の中に、何か味がしているかもしれません(これも、臭いと同じように、場合によっては、何も格別に味がしていないかもしれません)。
体のどこかが痛かったり痒(かゆ)かったり寒かったり暑かったりしているかもしれません(これも、臭いや味と同じように、場合によっては、何も格別に痛かったり痒かったり寒かったり暑かったりしていないかもしれません。でも、少なくとも体の何処かが、何かに触れている感じは、きっとしているでしょうね)。
村上憲郎、前野隆司、人工知能
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