インターネット小売りで世界最大手の米アマゾン・ドット・コムが1台約15000円という独自のタブレット端末の販売に乗り出す。ネットショッピング市場を切り開き、2007年に発売した電子書籍端末「キンドル」で、約500年に渡り続いてきた出版文化を一変させたアマゾン。低価格端末をあらゆる家庭に浸透させ、コンテンツ流通の新たなプラットフォーム(基盤)を築こうとしているジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の「流儀」をその発言から読み解く。
「4年前、過去5世紀ものあいだ続いてきた『書籍』を再発明しようと試みたが、当初は懐疑的な反応も少なくなかった」
9月28日。米ニューヨークで開いた記者会見で、ベゾスCEOはこう切り出した。2007年発売の初代キンドルへの逆風と成功、最低価格79ドル(約6000円)の新型キンドル、そしてタブレット端末「キンドル・ファイア」について1時間にわたってひとりで語り、参加者からは「まるでベゾス劇場だ」との感想が漏れた。
アマゾンのタブレット端末への参入については今春から度々噂されており、この日の発表もほぼ想定通り。ただ、最大の見せ場は会見の終盤に待っていた。
「1800万本以上の音楽や映画、テレビ番組、本や雑誌、アプリなどを楽しむことができ、14.6オンス(約414グラム)と軽量。処理速度の速いデュアルコアプロセッサーを搭載した商品を199ドルで提供します」
アナリストらの事前予想(250ドル)を大幅に下回る衝撃的な価格設定。現在タブレット市場で圧倒的なシェアを誇る米アップルの「iPad(アイパッド)2」の最低価格の半分以下という安さだ。米調査会社のアイサプライは、アマゾンの発表直後に「ファイアの原価は209.63ドル」との試算を公表。カナダの調査会社UBMテックインサイトは「150ドル」と見積もった。
アマゾンは販売計画を公表していないが、年内に200万~500万台を出荷するとの見方が有力だ。採算割れでなくとも非常に薄利であることが間違いない商品のため、業績にはマイナスになるのでは――。株式市場ではこんな懸念も出て、株価は4日続落した。
しかしベゾスCEOは一向に気にしているそぶりはない。それは同社の「立ち位置」が、電子商取引のライバル企業と根本的に異なるためだ。
「当社のサービスを一括して提供できるすばらしい商品を作ることができないかと自問してきた」
アップルなどは基本的に商品そのもので利益を上げるビジネスモデルを想定しているが、アマゾンはコンテンツ販売が主力だ。28日の会見でもベゾスCEOは「15年にわたってメディアビジネスを手掛け、年間売上高150億ドル規模にまで育った」と説明。端末販売で採算割れ、もしくはぎりぎりの薄利でも、コンテンツの出口を確保しておけば収益は後から付いてくるとの考えがある。
ジェフ・ベゾス、キンドル
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