IT(情報技術)を駆使して遺伝子などの生体情報を調べる巨大な「データ処理産業」が立ち上がりつつある。この新しい産業インフラに電機メーカーなど関連企業が野心を見せている。東日本大震災で日本の取り組みの遅れが浮き彫りなった半面、韓国のサムスングループは医療データビジネスの覇権をめざして布石を打ち始めている。
「親のように脳卒中にならないか心配だ」。放射線量が高く屋外を自由に出歩けない福島県飯舘村。ここに住んでいた高齢者は医師に対し、自らの遺伝的な背景と生活習慣からくる発病への恐れを口々に訴えている。被災地に診療に出かけた東京大学の上昌広教授は「遺伝子などのデータを基に病気のリスクを伝えた場合、患者にも納得してもらえるため予防・治療の効果が高い」と指摘する。
住民の希望に応える形で、相馬地区で診療する医師たちは必要があれば遺伝子などを検査しながら、生活スタイルなどの外部環境や遺伝と病気・健康状態との関連データを集めようと動き始めた。だが、行政側には現場で働く医師たちからの情報を吸い上げる体制は整っていない。
「調査は福島県がやる」。「現場に医師も送ってこないのに……」。自治体間の予算獲得競争の中で、被災地の住民の診療データ集めは格好の材料。福島県には今後40年間で合計3000億円の研究費が投入されるともささやかれ、東北大と東大の主導権争いも見え隠れする。
「SNP(1塩基多型)解析なら8億円あれば2000人の身元不明者の確認ができる」。ヒトゲノム(全遺伝情報)解析の第一人者で、政府の医療イノベーション推進室長を務める中村祐輔氏(東京大学教授)は大地震の発生後、身元不明の遺体の遺伝子データを収集し、データバンクに加えることを提案した。身元確認だけでなく、今後の医学の発展にも生かせるからだ。
だが、現在の身元確認は歯型による手法が中心。警察は現行の簡易版のDNA(デオキシリボ核酸)鑑定方式に固執した。日本の遺伝子データの収集は全体としては米国、中国に比べて遅れていたが、ここにきて活用を模索する動きが目立つ。それでも様々な利権や官僚機構の硬直性が足かせとなり、思うように身動きが取れない。
サムスングループ、オバマ、ヘルスケア、李健熙
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