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劣勢の医療機器開発 「脳を操る」で巻き返せ
編集委員 矢野寿彦

2010/7/23 7:00
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 約2兆円とされる日本の医療機器(器具)市場。高齢化が進むことで成長産業としての呼び声が高く、政府も新成長戦略のなかで「健康・医療」を重点分野と位置付けている。しかし現状は、人工心臓やカテーテル(細管)といった治療用医療機器分野で海外勢に大きく後れをとっている。国がもくろむように日本勢による巻き返しは可能なのか。欧米製との差は歴然で、思っていた以上に壁は高く、厳しい。

医療機器の開発は医師とメーカーの連携が欠かせない(神奈川県足柄上郡中井町のテルモメディカルプラネクス)
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医療機器の開発は医師とメーカーの連携が欠かせない(神奈川県足柄上郡中井町のテルモメディカルプラネクス)

 「ペースメーカーや植え込み型除細動器は今や心臓病治療に欠かせない医療機器だが、ほとんどすべてが海外製品。この分野で日本の実力は何周も遅れており、もうどうすることもできない」。こうこぼすのは国立循環器病研究センターの北村惣一郎名誉総長。国内メーカーは、自社が開発した補助人工心臓の早期承認を求め、奔走しているが、こうした循環器系分野で革新的な国産医療機器が登場し、産業に育つのは極めて難しいとみる。

 確かに医療機器開発に向けた基盤が違う。欧州、とくにドイツは「治療の可能性」を最優先する。日本や米国の基準に照らすとまだまだ安全性や有効性が不確かな試作段階の機器でも、メーカーは「CEマーク」と呼ぶ認証を取得さえすれば、販売できる。医師は試作機を実際の患者に試し、不具合などを洗い出し、メーカーと二人三脚でブラッシュ・アップしながら、改良する。「医療機器開発はまず欧州で」というのがすっかり定着してしまった。

 日本では医療機器開発も薬事法の規制を受ける。薬と同じように、まず動物実験で試し、臨床試験(治験)へと進んでいく。心臓病の難病のように患者数が少ないと、治験がなかなか前に進まない。競争力のある製品に仕立て上げるには、医師が臨床現場で試して改良を重ねる作業が欠かせないが、「薬事法で未承認機器は医師が使いづらい」(テルモの和地孝会長)。

 治験・審査期間の長さも長年大きな問題となってきた。海外では使える最新の医療機器が国内で使えない、いわゆる「デバイス・ラグ(遅れ)」だ。ただ、ここ数年は改善傾向にあり、医療機器開発を後押しする上で、時間はかかるが今後は解消される公算が大きい。

 むしろ気がかりなのは、医療機器を成長産業にする戦略がきちんと描けていない点だ。優れた医療機器を支える「ものづくり技術」は日本にはある。これを生かすには、「なにもかも」に手を出すのではなく、中長期的視野に立って開発分野を絞り込むことが必要だろう。

BMIの臨床応用により治療
可能な主な疾患と国内患者数
臓器・器官疾患患者数
(万人)
てんかん23.5
パーキン
ソン病  
12.6
神経
骨格筋
顔面まひ
四肢まひ
10
疼痛緩和30
心臓狭心症
心筋梗塞
105
心筋症
心不全
22.7
不整脈21.1
すい臓I型糖尿病13
ぼうこう
腎臓
尿失禁300
※革新的国産治療機器開発に向けた研究開発機能拠点の形成より

 日本学術会議は2年前、「革新的国産治療機器開発に向けた研究開発機能拠点の形成」という報告書をまとめた。ここで、取り組むべきテーマとして「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)技術」をあげた。BMI技術の臨床応用により、パーキンソン病やてんかん、慢性疼痛(とうつう)や尿失禁、精神疾患の効果的な治療に道が開ける。国内だけでも対象患者数は500万人以上にのぼるという。

 脳神経や感覚器、運動器の治療機器は循環器系に比べるとほとんど手付かずの分野だ。米国では国立衛生研究所(NIH)を中心にすでに多額な資金を投じて力を入れているが、日本にも人工網膜や機能的電気刺激などの基盤技術で独創性ある技術も少なくない。

 報告書をまとめた北村名誉総長は「BMI技術を臨床応用の視点でみると、日本も米国も欧州も横一線の『よーい、スタート』段階。まだ、十分、勝ち目はある」という。産業界で多くの会社が取り組んでいる「選択と集中」の戦略は、医療機器の市場でも通用するはずだ。

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医療機器、人工心臓、カテーテル、ペースメーカー、補助人工心臓、医療機器開発、薬事法、日本学術会議、ブレイン・マシン・インターフェース

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