水素と酸素から電気を作り出す燃料電池。原理はこれと似ているが、反応に微生物の力を借りて電気を作り出す研究が進んでいる。名付けて「微生物燃料電池」。従来型の燃料電池と比べて効率は劣るものの、微生物による廃棄物の分解など「合わせ技」で新たな可能性を開こうとしている。
東京大学の駒場リサーチキャンパス(東京都目黒区)。「駒場オープンラボラトリー」に科学技術振興機構(JST)の「橋本光エネルギー変換システムプロジェクト」(研究総括、橋本和仁東京大学教授)の研究拠点がある。ここで微生物グループを率いるのが渡辺一哉特任准教授だ。
微生物燃料電池の要となる微生物は「電流生成菌」と呼ばれる細菌だ。有機物をエサにして分解してエネルギーを得ているが、その過程で電子を外部に放出する性質を持っている。同グループはシュワネラ菌と呼ばれる種類などを使っている。
これを有機物とともに水を満たした反応層に入れておく。微生物が有機物を分解し、放出した電子を電極(負極)に渡すことで電流が流れる仕組みだ。微生物のエサとなる有機物を与え続ければいつまでも電気を発生し続ける。
微生物燃料電池の活用法として、研究チームは2つの方向性を想定している。1つは比較的大きなプラントで、下水や工場廃水を微生物で分解しながら「副産物」として電気を得るやり方。
もう1つは、システムを小型化して携帯機器の電源などに使うものだ。現在はメタノールを使った燃料電池が開発されているが、微生物燃料電池ではメタノールよりも安全な原料を使えるようになる。
課題は発電の効率を上げること。2010年には大きな進展があった。研究を始めた当初は1リットル当たり1ミリ~10ミリワットしかできなかったのが「1リットル当たり2ワットの水準まできた」(渡辺氏)。世界的に見ても最高水準で「一気に実用化の見通しがみえてきた」(同)。
効率アップの原動力になったのは電極の構造の工夫。微生物が電子を渡す側の負極を、グラファイト表面にカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を多数つけた微細な構造にすることで、電流が流れやすくなることがわかった。
電流生成菌の改良や、システムの最適化などの工夫と併せ、今後もう一段の効率アップを狙っている。
渡辺氏のグループでは、同じく微生物を利用した太陽電池の研究にも取り組んでいる。電流生成菌のエサである有機物を、別の微生物に光合成によって作らせる。これらの組み合わせで電気を取り出す。微生物による自然の営みを利用しつつ、エネルギーを得ようという可能性を秘めた試みだ。
燃料電池、微生物、カーボンナノチューブ、太陽電池
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