ヤマハはピアノの最高峰であるコンサートグランドピアノで、19年ぶりとなる新シリーズ「CFシリーズ」を開発し、受注を始めた。国内の20~30代の若い技術陣が中心となり、同社が60年に渡って蓄積してきたコンサートピアノ作りの知恵を生かして生み出した新作だ。ピアノ市場も新興国が主戦場になるなかで、日本にもの作りを残す意義は何か。その問いへのヤマハの答えが込められている。
世界のピアノコンクールで使用されるコンサートグランドピアノは、自動車業界でいう「F1」のような存在。コンクールでの評価がメーカーの評価に直結する。ヤマハのこれまでの顔は1991年に開発した「CFIIIS」。音の美しさに定評はあるが、オーケストラと一緒に演奏するコンチェルトなどでは、スタインウェイなど世界を代表するメーカーのピアノには劣る、とされていた。
今回開発した「CFシリーズ」の開発を現場で指揮したピアノ事業部商品開発部の松木温本体グループマネジャーは「CFIIISは歌の上手な、しなやかな日本女性」と表現する。ヤマハの持ち味である透き通るような美しい音を保ちつつ、強く響かせることができないか。CFシリーズの開発テーマはこの1点に集約された。
大ホールに音が響き渡るピアノにするには、ピアノの響板が従来より自由に振動するように設計する必要がある。振動する響板を支える支柱の強度も大幅に上げなくてはならない。しかし、開発チームのメンバーは20代後半から30代。グランドピアノの開発経験がない若手ばかりだ。
途方に暮れる松木氏らが、最初に手掛けたのは、60年間に及ぶ同社のコンサートピアノの開発データをもう一度評価し直すことだった。実際に製品に使用されなかった加工技術なども、違った使い方ができないか検討する。最新のコンピューター技術を使ってシミュレーションもし直す。地道な作業を繰り返し、過去の技術を再生する。そして歴代の先輩エンジニアが到達できなかった「美しく力強い音」を表現した。
「スタインウェイに十分対抗できる」。社内外の評価は開発陣が想像していた以上に高かった。外観も刷新。脚部分はCFIIISよりすらっとした印象になり、「黒」という色にもこだわった。
ヤマハ、ピアノ、オーケストラ
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