新日本製鉄と住友金属工業は、国際石油開発帝石がオーストラリアで進める液化天然ガス(LNG)開発事業「イクシス」向けのパイプライン用鋼材を受注した。それぞれ14万トンずつの大型受注に社内はさぞ沸き立っていると思いきや、関係者の表情に笑顔はない。「めでたさも中くらい」なワケは何なのか。
イクシスはオーストラリア北西部沖の大型ガス田開発プロジェクトで、国際帝石が76%、仏トタルが24%出資する。総事業費は340億ドル(約2兆6000億円)、LNG生産量が年840万トンという大型案件。沖合で採掘したガスを陸上基地まで運ぶパイプラインは全長890キロメートルに達し、使用する鋼材は約69万トンにのぼる。
受注総額1000億円規模の「超大型」商談に、新日鉄は鉄鋼商社のメタルワン、住金は住友商事、JFEスチールは伊藤忠丸紅鉄鋼、欧州ユーロパイプが三井物産とそれぞれタッグを組んで受注にしのぎを削った。
だが日本勢にとって、結果は必ずしも満足のいくものではなかった。新日鉄、住金が14万トンずつを受注したものの、残る41万トン、比率にして全体の6割相当をユーロパイプが受注したのだ。
ユーロパイプが大きな受注シェアを獲得した理由はずばり、価格だ。ユーロ安で価格競争力を高めたユーロパイプと、超円高で輸出価格を高くせざるを得なかった日本勢。いくら日の丸プロジェクトとはいえ、オペレーターの国際帝石としてはコスト上、有利な方を選択する。メーカー幹部は「もっと受注したかったが、この為替水準じゃとてもかなわない」とあきらめ顔で語る。
「イクシス」に象徴されるように、世界は今、ガス田の開発ラッシュだ。天然ガスは化石燃料の中では二酸化炭素(CO2)の排出が少なく、米国ではシェールガスと呼ばれる非在来型の天然ガス開発も活発になっている。東京電力福島第1原子力発電所事故を受けたエネルギーのガスシフトもある。国際エネルギー機関(IEA)は化石燃料のなかで唯一、天然ガスが2035年までのエネルギー構成でシェアを高めると予測。「天然ガスの黄金時代」と評した。
鋼材というと「環境貢献」とは縁遠いように思えるが、低炭素化ニーズにも合致した天然ガス開発用の鋼管は、車体軽量化で燃費改善に寄与する自動車用鋼板などと並んで、鉄鋼メーカーの「環境ビジネス」の顔といえる製品だ。日本の鉄鋼メーカーは、パイプラインに使う鋼管や、ガス油田の掘削に使う油井管など、資源・エネルギー分野で世界シェア首位の製品をずらりとそろえる。特に過酷な使用環境に耐える上級グレードでは世界一の実力といっていい。
例えば住金。金属を腐食させる高濃度のCO2や硫化水素にさらされる過酷な環境で使える高ニッケル合金油井管で8割の世界シェアを握る。JFEは高い耐食性を持つクロム含有(13%)油井管で4割の世界シェアを握る。新日鉄は一般的なラインパイプ鋼管規格「X80」と比べて強度が1.5倍ある「X120」の開発と実用化で先行する。
三井物産、住友商事、新日本製鉄、イクシス、JFEスチール、LNG、国際石油開発帝石、住友金属工業、シェールガス、東京電力、トタル、伊藤忠丸紅鉄鋼、メタルワン、JFE、バローレック
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