鉄鋼は日本の産業界で最大級の二酸化炭素(CO2)排出源だが、グローバルにみて最も省エネルギーが進んだ産業のひとつであり、エネルギー原単位でみた場合の効率は突出している。日本を100とした場合、米国は125、英国は122と20%以上効率が悪く、世界の鉄の半分近くを生産するまでになった中国は129、新規の高炉建設計画が目白押しのインドは132だ。日本に次いで効率性の高い韓国も107で、日本の鉄鋼メーカーの優位性はまだ維持されている。
その効率性を支えているのは、研究開発と積極的な投資だ。鉄鋼生産のプロセスでの省エネの代表といえば、高炉から出た鉄を下工程まで一気に加工してしまう「連続鋳造」だが、ここの部分では日、韓、EU(欧州連合)、米国などは導入比率が100%に近く、あまり差はついていない。古い設備の残る中国ですら80%を上回っている。コークス炉で発生するガスや高炉の炉頂圧を利用した発電もEU勢は日本並みに設備を入れている。最も違いが出ているのは加熱のために大量のエネルギーを使うコークス生産での熱回収だ。
コークスは石炭をチェンバーと呼ばれる炉内で、高温で蒸し焼き(乾留)にすることでコールタールやピッチ、硫黄などの不純物を除き、高温で燃えるようにしたものだ。チェンバーから出てきた高温のコークスはすぐに冷却するが、世界的には水をかける方式がまだ一般的だ。当たり前だが、熱を蒸気にして逃してしまっている。日本の製鉄所でもかつては赤熱したコークスに水をかけ瞬間的に白い蒸気が立ち上る光景がみられていたが、今ではほとんど見かけなくなった。赤熱コークスを水ではなく、不活性ガスで冷却し、熱を回収。それをボイラーの熱源にし、発電や蒸気製造に使っているからだ。コークス乾式消火設備(CDQ)と呼ばれる設備だ。CDQの装備率は日本は100%に近いが、日本と高炉操業の効率性で競う韓国でも約70%、中国で20%強にとどまっている。
高炉自体ではなく、高炉の操業に不可欠のコークスを生産するプロセスの違いが日本とほかの国の鉄鋼の原単位でみたエネルギー効率、二酸化炭素の排出量の違いを生み出している。
だが、コークスをめぐってはさらに興味深い取り組みが始まろうとしている。石炭ではなく、木炭からコークスをつくり、高炉に使おうという試みだ。住友金属工業はブラジル東南部のミナス・ジェライス州ジェセアバという小さな街で、仏バローレックと合弁で年産100万トンの高炉を建設、木炭コークスを全面的に使用する。原料となる木材は高炉周辺に植林したユーカリを使う。ユーカリは7年間で高さ30メートルまで伸び、コークス原料になるという。つまり7年分のユーカリ林があれば、それだけで高炉の操業を賄うだけのコークスを得られる。言うまでもなく、植物起源のため二酸化炭素の排出は木材の輸送やコークス炉の熱源用を除けばゼロだ。
実際、ジェセアバ周辺には高炉用に7年分のユーカリがすでに栽培されつつある。7年分は面積に直せば琵琶湖にほぼ匹敵する。高炉の規模は小さいものの、「低炭素・循環型高炉」だ。考えれば、古代のたたら製鉄にせよ、産業革命の直後にしろ、鉄づくりの熱源は木材だった。住友金属のブラジルの「木炭コークス高炉」は先祖返りともいえるが、コークスを中心に省エネ、環境性能を高める日本らしい新たな取り組みだ。
鉄鋼メーカー、連続鋳造、コークス、エネルギー原単位、住友金属工業
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