ドイツのダイムラーが高級乗用車の世界販売で首位の座を譲ったのは2005年のことだった。その後は「永遠のライバル」であるBMWが王座を守ってきた。世界2位になって就任し、その後の任期延長で6年目となったディーター・ツェッチェ社長(58)のもとで、ダイムラーの「メルセデス・ベンツ」は再び君臨できるのか。9月に開催したフランクフルト国際自動車ショー(IAA)ではその解が垣間見えた。
9月13日のIAA開幕の直前、独紙フランクフルター・アルゲマイネが掲載したツェッチェ氏のインタビューは、ダイムラーの「方針転換」を伝えていた。「1台あたりの売上高の多さや、各種の比較テストでの優位性」。台数の多寡を聞かれるとツェッチェ氏はいろいろな切り口でトップの証しを話したものだが、ここでは違った。「それでは足りないとわかった。2020年には他の高級車メーカーよりも多く売る」と明言したのだ。
「14年に150万台、15年には160万台」と右肩上がりの計画だが、聞き手は「意欲的ですね。シュツットガルト(ダイムラーの本拠地)では、もう戦いをあきらめたかのようでした」と皮肉たっぷりに返した。
ダイムラーの高級車販売が変調したのは、ユルゲン・シュレンプ前社長のマネジメントの失敗が原因であることは明らかだ。1998年以降の米クライスラーとの合併、三菱自動車や現代自動車との資本提携で自動車業界の「日の沈まない世界株式会社」を目指したが、大衆車メーカーとの合併・提携戦略で売れるクルマにつながる相乗効果は出なかった。05年にはメルセデスの利益が出なくなり、シュレンプ氏は会社を追われた。
合併後に業績が悪化したクライスラーに送り込まれたのがツェッチェ氏だ。同年にメルセデス乗用車の統括担当となり、06年から社長となって同職も兼務する。ドイツに帰ると早速、国内のリストラに踏み切った。城のような本社は売り、クライスラーとの合併は解消。社名をダイムラーとして再出発する。
その「壊し屋」ぶりに株主や現地メディアは拍手を送った。メルセデス・ベンツの高級車とトラックに経営資源を集中し、新興国にも積極的に進出。リーマン・ショックの影響も克服したが、「それでは足りない」というのがまさにいまの同氏の評価だろう。高級車販売の首位を奪い返していないからだ。
今年は自動車の誕生から125年。カール・ベンツが自動車で特許を取り、同時期にゴットリープ・ダイムラーがガソリン車を開発している。互いに面識がなかったとされる2人をルーツにするダイムラーにとっては当然、他社以上に大きな節目であり、IAAの開幕前夜も珍しく大々的なイベントを開催した。
IAAでの目玉はコンセプト車「F125!」。燃料電池を生かしたガルウイングの電気自動車で、最上級車種「Sクラス」の未来の姿だという。開幕日のプレゼンテーションでツェッチェ氏は「次の125年に向け、今後10年は攻める」とうたいあげた。勢いに押されたのか、独紙ハンデルスブラットは「13年末までの任期は再延長の公算」と報じた。
メルセデス・ベンツ、ディーター・ツェッチェ、ユルゲン・シュレンプ、ダイムラー
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