日本の製造業にとって、景気の波に左右されにくく、世界でも大きな市場を見込める医療分野は今後の成長市場の1つだ。それゆえ、新規参入組を含めて、多くの企業が医療関連機器などの事業強化を急いでおり、競争は激しくなるばかりだ。そこでは素材などの新技術を生かして、新たな市場を創造できるかが重要になる。顧客の医療機関にとっても、日本企業の優れたものづくり力への期待も高い。
医療機器分野で企業間の競争を左右する最近の重要なポイントは、新素材の応用技術だろう。素材開発は試行錯誤を繰り返しながら、じっくり時間をかけて取り組まなければ良い結果が得られない。医療機器ではこうした素材部品などを擦り合わせる必要があり、日本企業にとっては強みを発揮しやすいとされる。
この意味で注目されているのは、パナソニックグループのパナソニックヘルスケア(愛媛県東温市)だ。同社は2010年1月から、新しいセラミックス材料を用いた歯科用人工歯で歯科業界に進出した。同社はこれまでも医療機器を手掛けていたが、歯科向けは初めてだった。人工歯といった補綴物(ほてつぶつ)は、歯の悪い部分を削って取り除いた後、残った歯根部にかぶせるもの。土台として、歯根部を包み込む薄い「フレーム」を強度の高い材料で造り、さらにその上にやや軟らかいセラミックスを盛り上げて歯の形にする。パナソニックヘルスケアが担当するのは、このフレームを歯科技工所向けに製作、納入することである。
フレームは、割れにくく曲げに強い材料で薄くできれば、それだけ補綴物全体の設計に余裕ができ、歯科技工所での作業も楽になる。パナソニックヘルスケアは、同じパナソニックグループのパナソニック電工が、以前に大阪大学と共同で開発してバリカンの刃に採用していた「セリウム安定化正方晶(多結晶)ジルコニア/アルミナ」を使い、通常は0.5~0.6ミリあるフレームの厚さを0.3ミリ程度にまで薄くした。ジルコニアとアルミナのナノ(ナノは10億分の1)サイズの粒子を互いの結晶に混ぜ込んで「ナノ複合化材料」とした。これが曲げ強さを高めた「ナノジルコニア」となった。
通常、セラミックス材料を加工する場合は、焼成する前の比較的軟らかい半焼結体の状態で切削加工し、次いで熱処理を実行する必要がある。しかし、熱によって切削加工後の形状から微妙に変化するため、この変形分を見越して切削加工しておいたとしても、精度に限界があった。パナソニックヘルスケアは、切削加工機を独自開発して焼成後のナノジルコニアの加工を可能にし、高精度な完成品を得られるようにした。
ナノジルコニア、パナソニックヘルスケア、電極布、朝倉染布
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