日本の製造業は最近、海外企業の大型買収を含めて、積極的な海外シフトに動き出している。急速な円高の影響もあり、高コストかつ低成長の国内にとどまっていれば、じり貧が避けられないからだ。国内の産業界では「空洞化の危機」が強く叫ばれているが、現実には海外に飛び出すことで革新的な技術などが次々に生まれ、国内の雇用拡大にもつながるケースがある。大胆なグローバル化で日本のものづくり力を強化している企業の動きを現場から報告する。
鮮やかな青色で流線形の車体――。東レが9月14日に都内で初公開した2人乗り電気自動車(EV)は世界を驚かせた。米ボーイングの新型旅客機「787」の機体にも採用された炭素繊維をふんだんに使い、市販車より4割も軽くしたのだ。
最高時速147キロメートル。小さな電池容量ながら、1回の充電で185キロメートルも走る。炭素繊維で世界首位の技術力が発揮されたが、その裏側には「秘密」もあった。成型技術の中核を担ったのがドイツだったことだ。
炭素繊維を飛躍させる用途開拓先として自動車は本命中の本命。日本の常識では事業の浮沈にかかわる技術開発は国内で独占する。だが、東レは違う。2008年に資本参加した独部品メーカーのACEに頼ったのだ。
今回のEVは車台や骨格、ボンネットなどで炭素繊維を採用した。樹脂と混ぜて金型に流し、熱で固める手法だ。基本技術は日本の研究所が確立したが、実際の量産に必要な精緻な金型技術はACEが持っていた。
日独で連携したからこそ、東レは炭素繊維部品の量産化で大きく前進した。副社長の田中千秋は「クルマ作りは大きく変わる。15年以降に実用化したい」と意気込む。
日本企業が世界シェア7割を握る炭素繊維は日本にとって“虎の子”の技術だが、東レは国内に封じ込める考えがない。
御手洗冨士夫、東レ、キヤノン
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