筑波大学の山海嘉之教授の研究グループが身体機能の補助技術や脳とコンピューターをつなぐシステム、体の状態を見守る装置などの研究を進めている。いずれも健康長寿社会に向けたイノベーション(技術革新)。最終的には「人支援技術産業」という新しい産業の創出を目指す挑戦だ。
頭にかぶった黒いヘッドギアにいくつも並ぶ赤や緑、青などの光。光の色はその部分で検出した脳内の血液濃度を示しており、それに応じて変化する。新開発された「ヘッドマウント型ブレインインターフェース」だ。
脳内の血流を観察する機械は従来もあるが、新装置は検出結果がコンピューター画面ではなく、頭部に表示されるのが特徴。脳の活動が刻々と変化していく様子がすぐにその場で見える。
様々な使い方が考えられるが、例えば感情の変化をとらえ、数値データで評価するのに使えるという。人間の感性に合わせた商品など「製品開発に応用できるのでは」と山海教授はみる。
山海教授といえば、体の機能を補助する装着型ロボット「ロボットスーツHAL」の開発で知られる。国の最先端研究開発支援プログラムに選ばれ、「健康長寿社会を支える最先端人支援技術研究プログラム」に取り組んでいる。研究の進捗状況が筑波大で2月に発表された。その一つがブレインインターフェースだ。
HALをベースにした身体機能を補助、拡張する研究も進めている。HALを装着して体を動かすと、筋肉などの動きを検出し、3次元CG(コンピューターグラフィックス)で表示するシステムも開発した。これを使えば体の動きを詳しく解析でき、その情報を新たなロボット技術に活用できるという。
また、指にはめて脈拍を測定する携帯型のセンサーや、指を乗せると血液の状態を検出する新技術も登場した。こうしたセンサーを身につけておけば体をチェックしてくれる「人を見守る」システムを目指している。
こうした健康長寿社会に向けた人支援技術の研究成果は3月8~9日に東京で開かれる「サイバニクス国際フォーラム2011」で紹介される予定だ。
人支援技術は一見、従来のロボット化や自動化と似ているが、人を機械に完全に置き換えるのではなく、あくまでも人が主役という点が異なるという。人の仕事を楽にしたり、どうしても自動化できない作業を手助けしたりする。
例えば介護をする人が高齢者を持ち上げる負担で腰痛になるのをHALの技術で防ぐなど、様々な支援があり得るという。「電機や自動車と同じように、人支援技術産業を開拓することが最終的にやるべき仕事」と山海教授は意欲をみせる。
日本では新産業の創出が期待されている半面、新しいものに対する障壁が高く、迅速に進みにくいようにもみえる。研究開発にどとまらず産業化まで含めて新しいものを生み出すにはどうすればよいのか。そうした意味でも挑戦の今後が注目されそうだ。
身体機能、長寿社会、ロボットスーツ、筑波大学
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