8月下旬、都内で開かれたIT(情報技術)業界のイベントで、歌手の広瀬香美さんにインタビューする機会があった。1990年代、CMソングのヒットで有名になったが、最近はインターネットの世界で存在感を示している。一部では「ツイッターの女王」と呼ばれ、金曜夜には動画共有サイト、ユーストリームで生番組を持つ。
「CDショップのHMVが閉店し、テレビの歌番組も減って思い切り歌える場所がなくなってきた。自分の音楽を聴いてくれる人がどこにいるのか自分で探す時代。私はウェブの中にお客様がいると感じている」
広瀬さんは「メーンの商品、生きていく場所はライブ」と話す。ネットは、収入源のコンサートに足を運んでくれるファンを探す手段との位置づけだ。デビュー以来、初めてつくるファンクラブはネットを生かして運営し、情報発信のためネット通販大手アマゾン・ドット・コムのサイトも活用する。
米アップルが携帯音楽プレーヤー、iPodを発売したのは2001年。03年には音楽配信に乗り出した。クリックひとつで楽曲が買える仕組みは消費者に受け入れられ、音楽の楽しみ方は一変した。一方で、アルバム収録曲でも1曲単位でダウンロードできる「ばら売り」が一般化し、CDは売りにくくなった。配信を含め、トータルの音楽ソフト市場は縮小傾向というのが世界的トレンドだ。
| 音楽ソフト(パッケージ)と有料配信の市場規模 | |||||
| 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | |
| 音楽ソフト | 4222 | 4084 | 3911 | 3618 | 3165 |
| 配信 | 342 | 534 | 754 | 905 | 909 |
| 単位:億円。日本レコード協会まとめ。音楽ソフトは生産額、配信は売り上げ実績 | |||||
日本レコード協会(RIAJ)によると、CDなどパッケージ型の音楽ソフト生産額は09年で前年比13%減の3165億円。右肩上がりだったネット配信の売り上げも前年比横ばいの909億円と足踏みし、CDであいた穴を埋められない。映画や書籍より一足早くネット革命の洗礼を受けたレコード業界が抱える悩みは深い。
「クラスの友達に頼まれ、自分の音楽CDをCD―Rにコピーするのは違法か」「個人のホームページで、好きなアーティストの歌を聴けるようにしたらどうか」――。6月半ば、都内の新宿区立西早稲田中学校。レコード大手ソニー・ミュージックエンタテインメントと特定非営利活動法人(NPO法人)による「出前授業」を見に行った。
授業のテーマは音楽と著作権。会場の体育館には2年生150人が集まった。ソニー・ミュージックの社員らは、レコード会社の仕事を紹介したうえで、違法コピーが業界に与える打撃、結果的にアーティストが活動できなくなることを訴えた。
RIAJの08年調査では、違法音楽ファイルのダウンロード数は推定で4億714万曲。合法の3億2900万曲を2割も上回る。違法サイトの利用経験をたずねるアンケートでは「ある」との答えが10代後半(16~19歳)で59.5%に達した。
業界は合法サービスを識別する「エルマーク」をつくってサイトに張り付けるなど違法一掃に取り組む。出前授業も啓蒙(けいもう)活動の一環だが、10代後半で見る限り、違法サイトの利用率は06年から08年まで上昇が続く。
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2012年2月7日付 (2/6)
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