原子力発電所の安全性に対する不安を増幅させるような出来事が相も変わらず次々に生じている。昨年夏以降、原発関連の公開討論やシンポジウムでの「やらせ」問題が続々と発覚し、そのうち九州電力では社長、会長の辞任に発展。また、独立行政法人原子力安全基盤機構(中込良広理事長)では「検査手順書の丸写し」や管理ミスによる原発監視システムの停止など緊張感を欠いた組織の実態が表面化している。未曽有の事故の直後にもかかわらず、なぜ体質改善の兆候がないのか。55年前、日本の原発導入は時期尚早と原子力委員会委員を辞任した湯川秀樹博士(1907~81年)の“予言”は不幸にして的中している。
原発を巡る会合での「やらせ」問題は北海道電力や東北電力、中部電力、四国電力でも判明している。九電のケースが特に注目を集めたのは、同社自ら事実解明のために設置した第三者委員会の調査報告に異を唱え、首脳陣の意に添わない部分を無視したほか、国会の場で一度は辞任を示唆した真部利応社長がその後辞意を撤回したような言動を続けたからだ。
そもそも九電の「やらせ」問題とは、玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働に向けて経産省が昨年6月26日に開いた佐賀県民向けのテレビ中継説明会において、事前に九電幹部が社内や関係会社向けに「再稼働賛成」の投稿をするようにメールで呼びかけたというもの。調査を行った第三者委は9月末にまとめた調査報告で「やらせ」メールのきっかけを、再稼働賛成意見が増えることを期待すると九電幹部に語った古川康・佐賀県知事の発言にあったと認定したが、真部社長は「無実の方に濡れ衣を着せるわけにはいかない」と記者会見で真っ向から反論した。
さらに、第三者委の報告を受けて同社が10月半ばに経産省に提出した最終報告書でこの知事関与の部分を削除したことから、第三者委の委員長を務めた郷原信郎弁護士と激しく対立。所管大臣である枝野幸男経産相は第三者委の調査を支持する一方、「(九電の対応は)理解不能」「会長、社長の行動が原発周辺の住民の理解を得られるとは思えない」などと九電を厳しく批判した。
結局、第三者委の報告書がまとめられてから3カ月以上が経過した今月12日になって、九電はようやく真部社長、松尾新吾会長がそろって3月末に辞任する人事を発表した。最後は白旗を掲げる格好になったとはいえ、所管大臣や第三者委を向こうに回して不祥事の事実解明を曖昧にし、自らの“延命”を図ろうとしているように映った九電首脳のモラルハザード(倫理観の欠如)ぶりは、福島第1原発事故で電力業界に厳しい視線が注がれた直後のことだけに一層際立った。
湯川秀樹、真部利応、松尾新吾、九州電力、正力松太郎、原子力発電所、朝永振一郎
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