ホール氏は今年3月に米サンフランシスコで開催された「ゲーム開発者会議(GDC)」で、「最後のころは、会社の資金が尽きていくなかでベンチャーキャピタルへの報告に追われ、一体自分が何をやっているのかわからない混乱した日々を送っていた」と心境を語った。
ほぼ同時期に創業した米Zyngaは、世界最大のSNS「Facebook(フェイスブック)」向けのソーシャルゲームで成功し、1000万人以上のユーザーを集めるゲームを生んでいた。ホール氏のコンセプトは斬新だったが、Firefoxのプラグインを使うという習慣は定着せず、ブームを起こすことなく終わった。
ではホール氏はどうなったかというと、今年3月にはアップルの「iPhone」向けゲームを開発・販売する米Ngmocoに入社。今年11月にプロデューサーとして最初の仕事であるペット育成型ソーシャルゲーム「Touch Pets Cats」を日本を含む世界にリリースした。Ngmocoは、今年10月に日本のディー・エヌ・エー(DeNA)が約4億ドルで買収すると発表した会社だ。
ホール氏は起業失敗から得た教訓として、「お金と時間の投資を加速化する前に、中核となるインタラクションと体験をテストしなければならない」「パフォーマンスが悪いものを失うことをためらってはならない」と語っている。
「新しさ」に投資するシリコンバレー
ホール氏のケースからわかることは2つある。1つは、成功するかどうかわからないプロジェクトでも米国では資金を集められるということ。もう1つは、起業の失敗が本人のキャリア形成にマイナスに働いていないことだ。
特にシリコンバレーには、従来にない技術やサービスが登場したら、海のものとも山のものともつかなくても初期段階で投資しておくという伝統がある。「現代の二都物語 なぜシリコンバレーは復活し、 ボストン・ルート128は沈んだか」(アナリー・サクセニアン著、日経BP社)は、80年代のシリコンバレーについて「企業間の激しい競争があったがゆえに、新企業は独自の市場を見つけてそれを守っていく努力を惜しまなかったし、一方、競争と協力が複雑に絡み合ったなかから、技術革新が生まれていくことになった。個々の企業を見ると、こうした競争に生き残れなかったものも多かったが、地域全体としては豊かに花開いていった」と書いている。これは当時も今も変わらず、シリコンバレーの強さの原動力となっている。
ホール氏のケースは、その強みがソーシャルゲームでも発揮されたことを裏側から示したに過ぎない。サンフランシスコからシリコンバレーにかけての地域では、ソーシャルゲーム企業の産業集積が急速に進みつつあり、多くの起業が登場するなかでイノベーションが加速し、それがさらに新たな企業を生み出している。
日本のコンテンツ投資の現状は
一方、日本ではこうした資金の流れはなかなか起きない。
11月24日、経済産業省関東経済局が開催したセミナーで、日本アジア投資の子会社で創業期の企業への投資や事業育成を手がけるJAICシードキャピタル(JSEED、東京・千代田)の鈴木英樹氏(デジタルコンテンツファンド統括)が日本のコンテンツファンドの実情について語った。
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