3年ぶりとなる7連勝で首位・埼玉西武ライオンズに0.5ゲーム差の2位で前半戦を折り返した福岡ソフトバンクホークス。7月19日からの3日間は「鷹の祭典2010」と称して、地元・福岡を盛り上げるイベントを展開した。このイベントにはソフトバンクモバイルも積極的にかかわり、福岡でのブランド向上に力を入れた。全国展開する携帯電話会社では珍しい地域密着マーケティングの中身とは。
レプリカユニホームを福岡市内に5万着配布
鷹の祭典は夏の恒例イベントとしてすっかり定着した。7月2日から21日までのホームゲームでは、ホークスの選手が通常とは異なるデザインのユニホームを着て、福岡Yahoo!JAPANドーム(ヤフードーム)でのゲームに臨んだ。
今年のユニホームには、ソフトバンクの企業ブランドカラーとは全く関係のない赤を採用。10万着以上のレプリカユニホームを製作し、ヤフードームに足を運んだファンに配布した。鷹の祭典の期間中、観客席は赤一色に染まった。
このレプリカユニホームは球場だけでなく福岡市内の至るところで目に付いた。ソフトバンクショップはもとより、百貨店やコンビニエンスストア、商店街などでも店員がユニホームを着用して接客している。さらにタクシーの運転手や福岡空港の日本航空のカウンタースタッフまでが着用していたから驚きだ。
これらのユニホームは、協賛というかたちで鷹の祭典に協力している企業がホークスから購入したもの。店員や社員、運転手などに配布され、街中に出回ったユニホームは5万着近くに上るという。
福岡がここまで赤一色に染まった裏には、ソフトバンクモバイルの徹底したエリアマーケティング戦略がある。ソフトバンクモバイルマーケティング・コミュニケーション本部販売促進部プリント&イベント・プロモーション課の小林孝司担当課長は「プロ野球チームを持っているのは携帯電話会社の中でソフトバンクモバイルだけ。地元の人はソフトバンクに対する期待が高い。ブランドを底上げするパワーがあるホークスは、料金や端末とは別に他社との違いを出すことができる絶好のコンテンツと言える」と狙いを語る。
ショップでは来店者全員に応援グッズを配布
ソフトバンクモバイルは、7月から鷹の祭典にちなんだ赤と白の応援バンダナ「燃えんといかんバンダナ」をソフトバンクショップなどで配布した。小林課長は「福岡限定で25万枚を配布した。4月にも35万枚配布している。福岡県の人口は500万人程度なので、かなり高い割合でリーチしているのではないか」と手応えを語る。
プロ野球チームでは、東京ヤクルトスワローズのファンの傘を使った応援が有名だ。ホークスのファンはこれまでタオルを振り回していたが、今年はそろいのフラッグを振り回す応援スタイルを取り入れている。ただ、フラッグは1本500円と値が張るため、代わりとなるバンダナを無料で配布する施策に打って出た。しかもソフトバンクモバイルのユーザー限定ではなく他の携帯電話会社のユーザーにも配布し、来店のきっかけにしてもらおうとしている。
ホークスをバックアップする立場を貫く
ソフトバンクがダイエーから福岡ダイエーホークスを買収すると発表したのは2004年末のこと。孫正義社長は「携帯電話事業を始めるにはブランド認知を図ることが重要。そのためにホークスを買収した」と語っていた。その後、06年に英ボーダフォンから現在のソフトバンクモバイルを買収して以来、ブランド価値向上のために活用してきた。
九州の中でもソフトバンクモバイルが特に力を入れているのが福岡県だ。鷹の祭典では、福岡県内でテレビコマーシャルを集中的に放映。ヤフードームで7月3日に開館した「王貞治ベースボールミュージアム」を告知するテレビCMでは、ソフトバンクモバイルのCMキャラクター“お父さん犬”が一本足打法を見せて、王貞治氏本人と競演している。
「お父さん犬には昨年から、『ホークス応援団長』として活躍してもらっている。お父さん犬をきっかけに、野球ファンではない人にも興味を持ってもらいたい。CMは料金プランや新端末の紹介といったソフトバンクモバイルの広告っぽく見せることはせず、ファンや地元にソフトバンクに共感を持ってもらうことを心がけている。我々もホークスの勝利をバックアップする立場を貫いている」(小林課長)
福岡県内でもホークスファンは4割程度という。それが九州全体となると3割程度に下がる。ソフトバンクモバイルとしては加入者を増やすのが最終目標ではあるが、まずはお父さん犬という人気キャラクターで一般の人の関心を引いてホークスに興味を持ってもらい、ファンになって球場に足を運んでもらうという手順を考えている。「携帯電話会社を乗り換えてもらうのは大変なこと。しかし、ホークスのファンが次の買い替えのタイミングでソフトバンクモバイルを候補に入れてくれるようになればうれしい。嫌みなく地元の人に支持される施策をこれからも展開していきたい」(小林課長)。
エリアマーケティングは福岡県限定
通常4300円のA指定席が980円で購入できるチャンスが当たる施策など、ソフトバンクモバイルのユーザーの満足度向上も忘れない。「エリアマーケティングという考え方はソフトバンクモバイルにはあまりない。唯一、例外として展開しているのが福岡県」と小林課長は語る。
ソフトバンクに買収されてから、いまだに日本一がないホークス。チームが日本シリーズに勝ち上がり悲願の日本一を達成すれば、福岡のソフトバンク人気はさらに高まるだろう。
石川温(いしかわ・つつむ)
月刊誌「日経Trendy」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦」(技術評論社)など。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226
エリアマーケティング、携帯電話、イベント、コンビニエンスストア
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