NTTドコモが対応プランに名乗り
そのNTTドコモが、iPadへの取り組みでいち早く名乗りを上げた。
29日午後に開催された決算会見で、山田社長は自らiPadに言及。その後の質疑応答でも「ドコモとして前向きに取り組んでいきたい」と強い関心を持っていることを明らかにした。
iPadは米国ではAT&Tが対応料金プランを用意するが、端末自体はSIMフリーだ。AT&Tのプランはプリペイド方式で、端末だけで契約でき解約も簡単になっている。NTTドコモも「勉強中」(山田社長)としており、3G通信対応のiPadが日本で発売される4月以降には対応プランを投入する心積もりがあるようだ。
iPadはSIMカードの新しい規格「micro SIM」を採用しているが、「ドコモもmicro SIMの標準化作業に加わったことはあり、対応は決して難しくない。microといってもハード的に見れば金属部分は(通常のSIMカードと)同じで、周辺のプラスチック部分が小さくなっているだけ。あとはソフトウエアを変えるため検証が必要だが、数カ月で対応できる」(辻村清行副社長)という。
ネットブックと同じ販売方法?
NTTドコモがiPadに積極的なのは、やはりSIMフリーである点が大きい。アップルが販売する3G版iPadにNTTドコモがmicro SIMカードを供給し、それらを組み合わせて店頭で販売すればいいという計算がある。
NTTドコモは現在、ネットブックで採用しているUSB型通信端末との組み合わせ販売をiPadにも応用したいようだ。最近は家電量販店だけでなくドコモショップでも手がけており、かなり順調な売れ行きを示している。
「ネットワーク品質などが評価されていて販売は好調。月間5万台程度、シェアで30%程度になっている」(山田社長)。ARPU(一人あたり通信料)も4400~4800円といい、優良顧客であることは間違いない。
この販売方法では、ネットブックとUSB型通信端末をそれぞれ別製品として売っており、NTTドコモは通信部分をしっかりとサポートしてさえいれば、パソコンのサポートには責任を持つ必要がない。「使い方がわからない」「壊れてしまった」といった顧客への対応は当然のことながら、パソコンメーカーの範ちゅうとなる。
これまで、NTTドコモはいくつかのスマートフォンを手がけてきたが、海外メーカー製は日本の品質基準をなかなか満たすことができず、検証作業に時間とお金がかかってしまう。スマートフォンは高いARPUを期待できる一方、何かトラブルがあればすぐに出荷停止し、改善しなくてはならないなど、軌道に乗るまでコストがかかるというジレンマがある。
NTTドコモのスマートフォン担当者は「ドコモブランドでスマートフォンを出したいと思う一方で、ドコモがすべての責任を負わなくてはいけないという悩みもある。海外メーカーは特に手がかかっている」と本音を漏らす。
しかし、ネットブックではNTTドコモ側はUSB型通信端末さえ用意すればいい。契約回線数を増やせ、ARPUを稼ぎ、さらに手間もかからないというありがたい存在だ。SIMフリーのiPadは、まさにネットブックと同じ売り方ができる。何よりも開発にも販売にも「手がかからない」のが携帯電話会社にとっては魅力なのだ。
「土管屋」競争ならドコモ有利
もちろん、山田社長が「米国ではインセンティブ(販売奨励金)を出していないと言われるが、まだ勉強中の段階」というように、販売価格をいくらにするかは大いに検討の余地がある。SIMフリーでは他社の携帯電話会社に乗り換えるのも簡単であり、価格競争に陥る懸念もある。
いずれにせよ今回のNTTドコモのiPadへの前向きな発言は、同社がインフラのみを提供する「土管屋」の役割を積極的に果たすという意思表示とも受け取れる。これから携帯電話会社間で「土管屋競争」の流れが強まれば、エリアの広さ、速度の充実度などで他をリードできるのは確実にNTTドコモといえる。
その意味では、iPadの上陸は電子書籍市場の活性化より先に、SIMフリー端末として日本の通信市場を大きく揺るがす存在となりそうだ。
[IT PLUS 2010年2月1日掲載]
〈筆者プロフィル〉 石川温(いしかわ・つつむ) 月刊誌「日経Trendy」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦」(技術評論社)など。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226
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