基調講演でツェッチェ氏は、ICT(情報通信技術)で“武装”した自動車を「スマートビークル」と呼び、その開発と普及を急ぐべきだと訴えた。目的は、クルマのスマート化によって、石油への過度の依存や二酸化炭素(CO2)の大量排出、渋滞といった社会問題を解決すると同時に、事故を減らし、目的地に素早く誘導するなど、安全・快適さの向上を図ること。そのために、クルマは時間、音声、所有、エネルギー、情報の5点で自由になるべきだと主張する。
「時間の自由」とは、運転中でもそれに縛られることなく種々の情報にアクセスできること。「音声の自由」は、音声認識や音声合成といった技術を採用することで、ボタンやレバーなどに限られていたユーザーインターフェースを広く解放すること。
時間の自由や音声の自由の実現に向けては、昨今のスマートフォンに搭載されている機能が、自動車にも積極的に取り込まれていくことだろう。実際、今回のCESにおいても、スマートフォンさながらに、オーディオやカーナビの機能を指先一つで操作できる仕組みが提示された。
一方、「所有の自由」とは、クルマを購入しなくても、カーシェアリングなどで気軽に利用できるようになることを指す。「エネルギーの自由」は、ガソリンや軽油といったエネルギー源からの解放を意味している。ただし、エネルギー源を電気に切り替えて“自由化”するには、充電設備などに適切に到達できる手段を同時に提供しなければならない。「情報の自由」では、他の自由を実現する情報に加え、自動車そのものをセンサーに見立てて、道路の混雑情報などを取得・共有し、活用することが重要になるとした。
これまでも、電気自動車(EV)やカーシェアリングの実証実験では、利用できる充電設備の設置場所や自動車の空き状況を利用者に提供する仕組みは、それぞれ専用に構築・提供されてきた。カーナビ先進国である日本でも、自動車メーカー各社がそれぞれ独自のネット連携型の情報提供サービスを構築し展開している。
しかし今後は、自動車メーカー以外が運営するソーシャル型サービスと組み合わせることで情報を提供・共有するなど、クラウド連携型の仕組みを模索する方向に急速に舵(かじ)が切られるだろう。ソーシャル型サービスの一例としてツェッチェ氏は、利用者同士が目的地の情報を交換することで、同じ方向に向かう人同士が車をシェアする仕組みを挙げている。
■クラウド側のデータ収集・分析機能が重要に
こうしたスマートカーの価値は、クラウド側から提供されるサービスや情報の充実度合いで大きく左右される。すなわち、車載情報システム自体にどれだけ優れたユーザーインターフェースを用意しても、提供できる情報が少なければ顧客満足は得られない。クラウド側に、クルマに乗っている人が欲しがる街の情報がどれだけ蓄積されていて、それを的確に提供できるかが問われる。
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