日本経済新聞

5月25日(金曜日)

日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

コンテンツ一覧

特集:グリーン土木

高速道路の遮音壁を「発電所」に 土木に広がる太陽光発電(1)

2010/7/6 7:00
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
この記事をはてなブックマークに追加
この記事をmixiチェックに追加
この記事をLinkedInに追加

 住宅やビルだけでなく、土木分野にも太陽光発電利用の可能性が広がっている。本連載では、高速道路の遮(しゃ)音壁や、高架橋の上部に太陽光発電パネルを設置した例など、“未利用地”を大規模な発電所に変える試みに迫る。装置の価格下落や市場拡大などを見込んで太陽光発電事業に進出する土木関連企業も現れた。第1回の今回は、高速道路の遮音壁の事例を解説する。

 2010年3月20日に京都-大阪間の全線開通となった第二京阪道路。ここでは、西日本高速道路(NEXCO西日本)が遮音壁と太陽光発電パネルを一体化させ、そこで発電した電気で事務所の情報機器や電気設備に必要な電力の一部を賄っている。

 このシステムは枚方学研インターチェンジ(IC)-寝屋川北IC間の4カ所のICに設置した。太陽光発電パネルは合計2376枚で、その面積は約2400m2、総発電容量は120kWだ。一つのICで昼間の1時間に必要な電力は平均約70kW。天候にもよるが、平均してこの15~20%を賄う。西日本高速は、120kWの発電量だと年間約150万円分の電気料金を削減できると説明する。

 従来の電力調達方法に比べて、CO2を年間42t削減できる。これは、甲子園球場3つ分の森林が吸収するCO2の量に相当する。

 配線費や設備費も含んだ遮音壁一体型太陽光発電パネルの工事費は総額4億5000万円だ。国の補助金は受けずに、CSR(企業の社会的責任)としてCO2を削減する目的もあって太陽光発電を導入した。

広さを有効利用して発電

図1 遮音壁一体型太陽光発電パネルの断面図  資料の提供は西日本高速道路(NEXCO西日本)。
画像の拡大

図1 遮音壁一体型太陽光発電パネルの断面図  資料の提供は西日本高速道路(NEXCO西日本)。

 これまでに西日本高速が整備した路線では、法(のり)面や園地、トイレや料金所の屋根に太陽光発電パネルを設置してきた。ところが、第二京阪道路はほとんどが高架構造で、料金所も高架下に建設されて太陽光が当たらない。方法を模索するなかで、ほぼ全線にある遮音壁を活用することに決めた。遮音壁の上部は曲面で、屋根のように使えると考えたのだ。

 ただ、一般家屋用の太陽光発電パネルの流用は難しかった。一般家屋用はあらかじめ1枚の大きさが決まっているので、遮音壁に使うと無駄なスペースができてしまうからである。架台となるH形鋼に細かい加工が必要なことも流用を難しくする理由の1つだった。

 そこで、西日本高速とソーラーシリコンテクノロジー(千葉県木更津市)が遮音壁一体型太陽光発電パネルを共同開発した。パネルの1枚の大きさは0.51m×1.96mだ。

 1枚のパネルは、68枚のセル(薄く切ったシリコンに電極を付けて発電可能にしたもの)でできている。これは集光型球状シリコン太陽電池セルで、一般的な平板の太陽電池セルに比べ、シリコン使用量は5分の1から7分の1、発電能力は同等だ。新たに一体型のパネルとして製作すれば、セルを最大限配列できる。

 太陽光発電パネルと一体化させる遮音壁も、西日本高速、中日本高速道路(NEXCO中日本)、大東金属(大阪府四篠畷市)、日鉄住金建材(東京都江東区)、田島スチール(大阪市)が共同で新たに開発した(図1)。従来の遮音壁では配線を納めるスペースがないので、壁高欄など外側に配線しなければならなかったからだ。

 新しい遮音壁は、前背面分離型構造となっていて、背面パネルの一部を太陽光発電パネルにする(図2)。前面(道路側)と背面のパネルの間にできるすき間で必要な配線を確保する。

図2 遮音壁一体型太陽光発電パネルの設置手順  写真の提供は西日本高速道路。
画像の拡大

図2 遮音壁一体型太陽光発電パネルの設置手順  写真の提供は西日本高速道路。

 高架橋の道路側から施工できるのも特徴だ。「設置場所は地上30mほどの高さで、背面から作業するには高い足場などが必要になる。事故が起きて損傷しても、その部分だけ道路側から付け替えればいいので、維持管理がしやすい」(西日本高速関西支社枚方工事事務所施設工事班の川尻洋和工事長)。

 太陽光発電パネルの部分に水が浸入すると発電できなくなるので、パネル端部の納まりも工夫した。「太陽光発電部のパネルを固定する受け枠側をコの字形に形成し、その部分に発電部パネルを差し込み、すき間にシリコンを充てんして、水が入らない構造にした」(工事長を務めた西日本高速道路メンテナンス関西経営企画部の岡田浩一企画課長)。

 西日本高速は、民営化を機に環境対策を経営方針にして太陽光発電施設を整備してきた。09年度末までに設置した施設の発電容量は、第二京阪道路の120kWを含む812kWだ。太陽光発電に関する海外との技術協力も検討している。

(フリーライター 中川 美帆)

[日経コンストラクション2010年4月23日号の記事を基に再構成]

中川美帆(なかがわ・みほ)
 早稲田大学教育学部卒。鉄鋼・非鉄専門の日刊紙、土木専門の月刊誌での記者を経て、2008年に独立。「日経コンストラクション」を中心に、建設経営や、国内外の道路、橋、トンネル、港湾といった土木の工事にかかわる記事を書いている。

小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
この記事をはてなブックマークに追加
この記事をmixiチェックに追加
この記事をLinkedInに追加
関連キーワード

太陽光発電、高速道路、西日本高速道路、遮音壁、中日本高速道路、第二京阪道路、CSR、日鉄住金建材、大東金属

日経BPの関連記事

【PR】

【PR】

特集:グリーン土木 一覧

図2 第二京阪道路の遮音壁を利用した太陽光発電設備 (写真:西日本高速道路会社)

高速道路の本線にもLED照明
道路で進む環境対策(4)
[有料会員限定]

 二酸化炭素(CO2)排出削減の要請が高まり、道路の供用後も省エネ性能の向上が求められている。阪神高速道路会社は国内で初めて、…続き (2010/12/7)

図1 「エコキューオン」を採用した中央自動車道八王子管内遮音壁工事。面積は7300m2で、2010年4月から9月にかけて施工した。遮音壁の表面板と内部のアルミはくには、直径0.1mmの穴が開けてあり、穴を通ることで音のエネルギーを熱エネルギーに変換する (写真:神鋼建材工業)

新種の遮音技術が登場、道路を静かに
道路で進む環境対策(3)
[有料会員限定]

 道路の環境対策のなかで永遠のテーマともいえるのが騒音だ。自動車自体の騒音対策が進む一方で、道路でも遮音(しゃおん)壁の新開発や…続き (2010/11/30)

図3 2010年8月に実施した表面温度の比較画像。手前がオーシャンクールテックで、奥がアスファルト舗装。表面温度が約10℃低くなることを確認した (資料:太平洋プレコン工業)

遮熱舗装で「さらばヒートアイランド」
道路で進む環境対策(2)
[有料会員限定]

 都市部でのヒートアイランド現象の抑制策として、注目されるようになってきたのが遮熱(しゃねつ)だ。舗装などの表面に遮熱性塗料を塗って…続き (2010/11/24)

新着記事一覧

【PR】

モバイルやメール等で電子版を、より快適に!

各種サービスの説明をご覧ください。

日本経済新聞の公式ページやアカウントをご利用ください。

日経・JBIC 5/21更新

344.9 ▼-30.0 単位:円/トン

買気配313.6 売気配376.3

日経産業新聞 ピックアップ2012年5月25日付

2012年5月25日付

・名門ハザマ、10年目の白旗
・「すみだ産」世界に挑む、ものづくり現場発~東京・墨田を行く
・スマホ向け定額音楽配信、聞き放題で利用者拡大
・ヤマハ発が200万人試乗会、インドネシアで二輪販促策
・カジタク、家事代行、大阪・仙台でも…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

PR

関連媒体サイト

【PR】

ページの先頭へ

日本経済新聞 電子版について

日本経済新聞社について