住宅やビルだけでなく、土木分野にも太陽光発電利用の可能性が広がっている。本連載では、高速道路の遮(しゃ)音壁や、高架橋の上部に太陽光発電パネルを設置した例など、“未利用地”を大規模な発電所に変える試みに迫る。装置の価格下落や市場拡大などを見込んで太陽光発電事業に進出する土木関連企業も現れた。第1回の今回は、高速道路の遮音壁の事例を解説する。
2010年3月20日に京都-大阪間の全線開通となった第二京阪道路。ここでは、西日本高速道路(NEXCO西日本)が遮音壁と太陽光発電パネルを一体化させ、そこで発電した電気で事務所の情報機器や電気設備に必要な電力の一部を賄っている。
このシステムは枚方学研インターチェンジ(IC)-寝屋川北IC間の4カ所のICに設置した。太陽光発電パネルは合計2376枚で、その面積は約2400m2、総発電容量は120kWだ。一つのICで昼間の1時間に必要な電力は平均約70kW。天候にもよるが、平均してこの15~20%を賄う。西日本高速は、120kWの発電量だと年間約150万円分の電気料金を削減できると説明する。
従来の電力調達方法に比べて、CO2を年間42t削減できる。これは、甲子園球場3つ分の森林が吸収するCO2の量に相当する。
配線費や設備費も含んだ遮音壁一体型太陽光発電パネルの工事費は総額4億5000万円だ。国の補助金は受けずに、CSR(企業の社会的責任)としてCO2を削減する目的もあって太陽光発電を導入した。
広さを有効利用して発電
これまでに西日本高速が整備した路線では、法(のり)面や園地、トイレや料金所の屋根に太陽光発電パネルを設置してきた。ところが、第二京阪道路はほとんどが高架構造で、料金所も高架下に建設されて太陽光が当たらない。方法を模索するなかで、ほぼ全線にある遮音壁を活用することに決めた。遮音壁の上部は曲面で、屋根のように使えると考えたのだ。
ただ、一般家屋用の太陽光発電パネルの流用は難しかった。一般家屋用はあらかじめ1枚の大きさが決まっているので、遮音壁に使うと無駄なスペースができてしまうからである。架台となるH形鋼に細かい加工が必要なことも流用を難しくする理由の1つだった。
そこで、西日本高速とソーラーシリコンテクノロジー(千葉県木更津市)が遮音壁一体型太陽光発電パネルを共同開発した。パネルの1枚の大きさは0.51m×1.96mだ。
1枚のパネルは、68枚のセル(薄く切ったシリコンに電極を付けて発電可能にしたもの)でできている。これは集光型球状シリコン太陽電池セルで、一般的な平板の太陽電池セルに比べ、シリコン使用量は5分の1から7分の1、発電能力は同等だ。新たに一体型のパネルとして製作すれば、セルを最大限配列できる。
太陽光発電パネルと一体化させる遮音壁も、西日本高速、中日本高速道路(NEXCO中日本)、大東金属(大阪府四篠畷市)、日鉄住金建材(東京都江東区)、田島スチール(大阪市)が共同で新たに開発した(図1)。従来の遮音壁では配線を納めるスペースがないので、壁高欄など外側に配線しなければならなかったからだ。
新しい遮音壁は、前背面分離型構造となっていて、背面パネルの一部を太陽光発電パネルにする(図2)。前面(道路側)と背面のパネルの間にできるすき間で必要な配線を確保する。
高架橋の道路側から施工できるのも特徴だ。「設置場所は地上30mほどの高さで、背面から作業するには高い足場などが必要になる。事故が起きて損傷しても、その部分だけ道路側から付け替えればいいので、維持管理がしやすい」(西日本高速関西支社枚方工事事務所施設工事班の川尻洋和工事長)。
太陽光発電パネルの部分に水が浸入すると発電できなくなるので、パネル端部の納まりも工夫した。「太陽光発電部のパネルを固定する受け枠側をコの字形に形成し、その部分に発電部パネルを差し込み、すき間にシリコンを充てんして、水が入らない構造にした」(工事長を務めた西日本高速道路メンテナンス関西経営企画部の岡田浩一企画課長)。
西日本高速は、民営化を機に環境対策を経営方針にして太陽光発電施設を整備してきた。09年度末までに設置した施設の発電容量は、第二京阪道路の120kWを含む812kWだ。太陽光発電に関する海外との技術協力も検討している。
(フリーライター 中川 美帆)
[日経コンストラクション2010年4月23日号の記事を基に再構成]
中川美帆(なかがわ・みほ)
早稲田大学教育学部卒。鉄鋼・非鉄専門の日刊紙、土木専門の月刊誌での記者を経て、2008年に独立。「日経コンストラクション」を中心に、建設経営や、国内外の道路、橋、トンネル、港湾といった土木の工事にかかわる記事を書いている。
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