日本では疑問視されていたスマートグリッドの必要性が今、急速にクローズアップされ始めている。世界一停電が少ないとされた日本の電力網への信頼が、今回の東日本大震災で大きく揺らいだからだ。津波によって引き起こされた福島第1原子力発電所の事故で、首都圏の電力需給が逼迫(ひっぱく)、東京電力は戦後の混乱期以来となる計画停電を敢行する事態となった。
| 1. | 当面の事業機会は、HEMSよりBEMSの方が多い |
| 2. | HEMSが事業として成功するカギは「行動科学」にある |
| 3. | xEMSはクラウド化、ソーシャル化、スマートフォンの普及と共に進展する |
| 4. | 日本のxEMSは、互換性と相互運用性の確保が難しくなる |
| 5. | スマートグリッドの新ビジネスモデルは米国から出現する |
| 6. | 電池交換型EV(電気自動車)は中国で普及する |
| 7. | Vehicle-to-Grid(V2G)技術の実用化は2015年以降になる |
| 8. | 日本ではスマートグリッド関連の新しい事業機会は2020年までほとんど無い |
図1 スマートグリッドと「xEMS」がつくり出す事業機会 2011年3月31日に発行予定の『スマートグリッドのビジネスモデル(北米編)』(日経BP社)の一部を基に作成。HEMSはホーム・エネルギー・マネジメント・システム、BEMSはビル・エネルギー・マネジメント・システムの略で、xEMSはこうしたエネルギー・マネジメント・システムの総称である。
「日本の電力網はすでにスマート」。この言葉に代表されるように、国内の電力業界はスマートメーターを使って電力需給を制御するスマートグリッドの導入には消極的だった。このため、日本では今後10年ほどはスマートグリッド市場が成長せず、新しい事業機会やビジネスモデルは米国が主導するという仮説が成り立っていた(図1)。ところが、今回の大震災で状況は一変する。
■需給の自動調整で計画停電が不要に
日本の電力網は、確かに送電と配電の自動化は進んでいるが、需要側の電力計周辺が欧米の配電網に比べて後れをとっている。このため、電力需要をリアルタイムかつ正確に把握しながら需給を細かく制御するといったことが難しい。電力需要のピークが供給能力を上回りそうになると、あわてて意図的な停電(計画停電)を起こすことで、不慮の停電をなんとか回避しているのが今の状況である。
重要なのはピーク需要の抑制であり、需要側でやみくもに節電するだけでは経済的な悪影響も無視できない。また、今回に関しては何度も停電となった地域がある一方、全く停電がない地域もあり、不公平感が拭えない。
もしスマートメーターで電力を「見える化」し、需要に応じて動的に変動する電力料金プランを導入すれば、いわゆるデマンドレスポンス(需要側の反応・応答)が機能し始める。例えば、電力需給が逼迫してくれば電力料金を高く設定することで、高い料金を払いたくない消費者は電力消費を抑制する。料金が高くても使う必要のある企業などが必要なだけの電力を使うことで、限られた供給能力でも自動的に需給バランスを調整できるというわけである。
■スマートメーターの導入進む米国、「仮想発電所」も
スマートメーターの大規模な導入が進んでいる米国のカリフォルニア州では、米Pacific Gas & Electric(PG&E)社や米Southern California Edison(SCE)社といった大手電力事業者によってデマンドレスポンスが実用化されている。実際に真夏のピーク時でも電力の消費需要をうまく調整する仕組みが機能しているという。
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