スマートグリッド(次世代送電網)を中核に据えた実証プロジェクトが、2010年に入って日本でも次々とスタートし始めた。こうした国内の実証プロジェクトの技術課題の一つは、「逆潮流問題」を解決することである。
逆潮流とは、各家庭に太陽電池を大量導入することによって発生する余剰電力が、電力会社の送電網(配電系統)へ逆方向に流れ込むことである。逆潮流の量が増えると、次第に商用電源の電圧上昇や周波数変動など、電力品質に影響を与える恐れがある。ひとくちにスマートグリッドと言っても、国や地域によって開発目的や事情が異なるが、国内においては、この逆潮流問題を解決する技術やシステムの確立が重視されている。その技術を核に、スマートコミュニティやスマートシティといった都市開発プロジェクトに広げていく例も多い。
しかしその先に見えている本当の課題は、逆潮流問題を解決した上で、日本発のスマートグリッドを事情の異なる海外にどう売り込むかにある。例えば、新興国では広域電力網の本格的な構築自体がこれからであり、ニーズが高いのは「マイクログリッド」だといわれる。マイクログリッドとは、限られた地域内で太陽光発電や小型ガスタービン発電によって地域内の需要に合わせて電気を供給する方法のことだ。こうしたスケールの違いなどを乗り越えて実証プロジェクトで開発した技術を応用し、海外に売り込むような取り組みが、近く必ず求められ始める。
太陽光の逆潮流対策技術を海外で
日本政府が2009年4月に設定した「2020年に太陽光発電の規模を20倍の2800万kWに拡大する」という目標は、現政権にも引き継がれている。余剰電力買取制度や補助金などの手厚い施策で家庭への太陽電池の設置は増え続けており、10年後には本当に2800万kWまで増えそうな勢いである。この2800万kW規模における逆潮流対策を主目的にスタートしたプロジェクトが「次世代送配電系統最適制御技術実証事業」である。東京大学など3大学、9社の電力会社を含む25の企業が参加する。
同プロジェクトの最大の特徴は、家庭にある機器と電力会社の発電所の制御を一体で実施し、全体的な最適化を図ることだ。具体的には、東京大学の柏キャンパス内に3kWの太陽電池システム3台、ヒートポンプ式給湯器3台、電気自動車を1台導入した家を実際に1軒建てて各機器の制御を行い、一方で上流の原子力発電所や火力発電所の運用を含む上位系統から配電系統までを統合制御する(図1)。そのデータを基に、数百万件の家をシミュレーションによって統合制御する実験を行う。
統合制御の具体的なイメージは、次のようなものだ。例えば、急に日が差して各家庭の太陽電池で発生した余剰電力が一斉に系統側に流れ込んだ場合で考えてみよう。今回開発しているシステムでは、まず系統側でなんとか余剰電力を吸収し、安定させるための制御を行い始める。それでも吸収できないときは、太陽光発電を抑制する指示を各家庭の太陽電池システムに出す。その際、もし電気自動車がプラグインされていて充電の余地があれば充電を開始し、ヒートポンプ式給湯器にお湯がたまっていなければお湯を作り始める。どちらも必要なければ、太陽光発電の発電をストップするという具合だ。せっかく作った太陽光発電の電気をできる限り捨てないように有効利用すると共に、可能な限り高価な蓄電池を使わずに系統の安定化を図る狙いがある。
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