福島第1原子力発電所の事故によって、原子力発電に軸足を置く日本のエネルギー政策は大きな見直しを迫られた。その代替として太陽光や風力といった再生可能エネルギーへの関心が高まっているものの、発電量が天候などに左右されるため、一定量の電力を安定的に供給する「ベース電源」の役割を担うことは難しい。世界有数の資源を持つ地熱発電など、これまでに設置に制約が多かった再生可能エネルギーの開発を進める必要がある。
同時に、再生可能エネルギーのコストの高さを克服するため、従来の常識にとらわれない斬新な発想が求められている。そのひとつとして最近注目されているのが、中国における太陽熱発電による電力を高圧直流(HVDC)送電網で日本に輸入する「アジア・デザーテック計画」である。
デザーテック計画はそもそも、北アフリカの砂漠地帯に巨大な太陽熱発電設備を設け、HDVC送電網を通じて欧州に電力を供給する壮大なプロジェクト。ローマクラブが提唱し、デザーテックファンデーションが推進している。スイスの重電機器メーカーのABBや独シーメンス、電力・ガス会社の独イーオンなど12社が参加し、2050年までに地中海沿岸部や欧州の電力の15%を供給する計画だ。
太陽熱発電は太陽光を鏡(ヘリオスタット)で1カ所に集光し、その熱によって蒸気をつくり、蒸気タービンに送って発電する仕組み。太陽光発電に比べて発電コストが大幅に安い。そればかりでなく、蓄熱装置に熱をためることで夜間にも発電できるのが大きな利点だ。北アフリカ以外にも北米やオーストラリアの「サンベルト」といわれる太陽エネルギーの豊富な地域で開発が始まっており、一部では商用運転も行われている。
アジア・デザーテックでは、中国の中央部に位置する陝西省楡林(ユリン)に太陽熱発電設備を設置する。電力を周辺地域に供給するとともに、直線距離で1500キロ離れた日本まで韓国経由でHDVC送電網を敷設し、日本に電力を届けるものだ。この構想を進める東京工業大学の玉浦裕教授は「中国政府の関心は高く、早ければ数年以内にプロジェクトを開始したい」と言う。
アジア・デザーテックの特徴は、太陽熱発電設備でつくった電力をそのまま利用するだけでなく、豊富な石炭や天然ガスからジメチルエーテル(DME)を生成する工程にも使うことだ。楡林は中国有数の炭鉱地区である。DMEは石油代替の液体燃料として自動車に供給するとともに、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電の燃料にする。
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