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『胸を張れITモグラ』 第3話 昭和IT物語
釜田雅彦

(1/5ページ)
2010/8/27 7:00
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 武蔵電気の受注判定会議は、一定規模以上のSI(システムインテグレーション。企業の経営課題を総合的なシステムの構築によって解決すること)案件について、顧客と交渉中の条件で受注すべきか否かを決定する場である。

 「産業SI事業本部」と「官公SI事業本部」の両方で運営されている。

 岩本が若いころはこんな会議はなかった。

 「受注条件申請書」という書類にそのSIの受注条件とプロジェクト損益計算書を添付して、事業部長が承認すればそれでよかった。

 もっとも顧客がその条件で武蔵を選んでくれないと受注はできない。当たり前の話だが。

 

 武蔵は営業を重視する会社である。

 プロジェクト損益責任、つまり、そのSI案件で利益が出るか否かの責任は営業部門にあって、システム部門にはなかった。

 ライバルの国産コンピューターメーカー、朝日はその逆で営業部門にプロジェクト損益責任はなく、システム部門に損益責任があった。

 どっちが正しいかではない。会社の考え方である。

 

<第1章の主な登場人物>
山根勇二 化粧品会社大手ビキューのCIO(情報システム責任者)。48歳の最年少執行役員
清水大三郎 ビキューの創業者で代表取締役会長。87歳
清水健太郎 ビキュー社長。清水大三郎の一人息子
山根美紀 山根勇二の妻。コンピューターメーカー大手、武蔵電気の美人キャリアウーマン
山根杏子 山根勇二と美紀の娘。15歳
郷田耕造 ビキュー相談役。情報システム担当役員だったこともある。74歳
只野誠 ビキュー入社3年目から一貫して情報システム部に在籍。無口だが優秀な「システム職人」
岩本大樹 武蔵電気の専務。山根勇二とは20年来の付き合い
瀧本俊二 武蔵電気の部長。ある“事件”をきっかけに、山根勇二に頭が上がらない
岩本峰子 岩本大樹の母親
真樹時子 マキ化粧品店の経営者。元・銀座のママ

 武蔵は営業重視の考え方でSI事業を展開し、1980年代後半までは右肩上がりで成長してきた会社である。

 だから、岩本が事業部の営業現場でバリバリ営業をやっていたころは、受注判定など、よい意味でも悪い意味でも、いい加減なものだったのである。

 

 例えば、○○社向け××システム開発のSI案件。

 これを何社かのライバル会社と争って提案する。これでいける、これでいくべきだと岩本が思ったらバリバリ営業しまくって受注し、契約してしまう。

 はたと気が付けば、契約してしまったシステムを開発してくれるSE(システムエンジニア)が足りない。これはまずいと、社内外を自分で回ってSE体制をグリグリ作る。納期はSI案件によるが、だいたい半年から1年である。そして、ギリギリの納期で開発して納品する。

 納品すると一度か二度はトラブルがあるが、気合と誠意で乗り切る。

 ようやく乗り切ったと思ったころには一生懸命そのSI案件の営業をやっていたころから数えて、半年から1年の月日が流れている。

 

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