米アップル創業者で会長だった故スティーブ・ジョブズに世界を変え続けさせてきた「燃料」が「情熱」なら、「車輪」はその人の心の奥に突き刺さる「言葉」の力だろう。彼は巧みな言葉で、優秀な人々を引き付け、彼らにインスピレーションを与えて能力以上のものを引き出し、出来上がった「作品」を最上級のプレゼンテーションで世界に紹介し続けてきた。現在の経営者で、彼ほど多くの金言を残してきた人物は少ない。全3回の本連載では、そうした言葉の中から、未来への資産となるようなものを3つのテーマで12個集め、真意を解説していく。
1997年、アップルはまだどん底にいた。同年6月、アップルの開発者会議(WWDC=Worldwide Developers Conference)で、まだ前CEO(最高経営責任者)、ギル・アメリオのアドバイザーでしかなかったスティーブ・ジョブズが大勢の開発者との対話を行う「Fireside chat with Steve Jobs(スティーブ・ジョブズとの暖炉脇での対話)」と呼ばれた催しがあった。この1時間の対話の言葉には、難題だらけの逆境から、アップルを大転換させるためのさまざまなヒントが隠されている。今回(連載第1回)は、この対話の中から「大逆転へのヒント」となる言葉を4つ紹介しよう。
『Noと言えば、人々は怒り出す。』
When you say‘no’,you piss off people.
ジョブズが96年末にアップルに戻ってきた時、同社は色々な事業に手を出し過ぎ収拾がつかなくなっていた。「やっていること1つひとつは素晴らしくても、合計では、個々のパーツよりも劣っていた。ミクロ的な視点ではどれも意味がありそうだが、マクロ的な視点で見ると筋が通っていない」。97年の夏、アップルはそれまで開発者を巻き込んで進めていた技術を大量に切り捨てた。開発者は激怒した。ジョブズは「誰だっていい人でいたいと思う」「Noと言えば人々は怒りだす。Noというのはつらいことだ」とした上で、「焦点を絞るということは『Yes』ではなく『No』ということ」。「『No』ということの結果がいい製品を生む」と説得した。
『最大の弱みは、最大の強みになりうる。』
Your greatest weakness can be your greatest strength.
Macの互換機戦略について聞かれたジョブズは「互換機メーカーは蛭(ヒル)」と反意を示した上で、ハードもOSも1社で作っていることは、Windows陣営に対して弱みにも見えるが、強みでもある、と説いた。パソコン業界で何かの標準を作っても、それを製品に採用するまでにはとてつもない時間がかかる。ハード、ソフト、ネットなど各側面の調整に時間がかかるからだ。だが、アップルのように垂直統合なら、優れた製品を隅から隅まで自分でデザインして、より早く製品に落とし込むことができる。ジョブズはそう語り、CD-ROMドライブ無しの超薄型ノートパソコンでネットワークコンピューティングをする夢を語っていた。現在人気の超薄型ノートパソコン「MacBook Air」登場の10年以上前の話だ。
スティーブ・ジョブズ、MacBook Air、アップル、マイクロソフト、Windows、IBM、インテル、LaserWriter、WWDC
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