
日本通信が5月24日に発売したモバイル無線LANルーター「b-mobileWiFi」(左)と米アップルの「iPad」
米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」が国内発売される5月28日を目前にして、無線LAN技術を活用したサービスやネットワーク機器がまさに雪崩を打って登場してきた。「この製品で、iPadからNTTドコモのネットワークを使っていただける」――。NTTドコモの山田隆持社長は5月18日、6月に発売するモバイル無線LANルーターを発表し、こう期待を込めた。
5月中旬以降に開催された通信事業者の決算説明会や携帯電話夏モデルの発表会の陰の主役は、発売を間近に控えたiPadと、その通信手段となる無線LANだったと言っても過言ではないだろう。国内無線LAN市場は、ついこの春まで一部の事業者を除き「様子見」の雰囲気が漂っていた。それが米国で発売後1カ月弱で100万台を売り上げ、日本でも予約の受け付けがいったん停止になるなど人気を博すiPadの上陸直前に、一気に活況を呈するようになった。
| 通信事業者 | 無線LAN関連の取り組み |
|---|---|
| NTTドコモ | バッファロー製のモバイル無線LANルーターを一部の取扱店舗で6月24日に3万7000円で発売 |
| 「定額データプラン」の月額料金を上限4410円に値下げするキャンペーンを実施 | |
| 無線LANルーター機能を搭載する携帯電話機3機種を夏モデルとして出荷 | |
| NTT東日本 | 「フレッツ光」の契約者向けにモバイル無線LANルーターを月額315円で貸与し、無線LANアクセスサービスを月額210円に値下げ(3G回線を使う場合は別途契約が必要) |
| KDDI | 携帯電話機に無線LAN機能を追加するmicroSDカード「au Wi-Fi WINカード」を6月中旬に発売 |
| 「au one net 公衆無線LANサービス」を6月2日に月額315円に値下げ | |
| イー・モバイル | 新規加入限定でデータプラン(にねんM)などの月額料金を1000円値下げするキャンペーンを実施 |
| ソフトバンクモバイル | 公衆無線LANサービス「ソフトバンクWi-Fiスポット」をスターバックスコーヒーの店舗に展開。8月末までに約500店舗まで拡大 |
| 「ソフトバンクWi-Fiスポット」を60社1万8000アクセスポイントに拡大する計画を公表 | |
| 日本通信 | SIMロックフリーのモバイル無線LANルーター「b-mobileWiFi」(中国ZTE製)を1万9800円で5月24日に発売 |
モバイル無線LANルーター市場で競争ぼっ発
無線LAN業界が急激に活況となったのは、日本で発売されるiPadにSIMロックがかかり、ソフトバンクモバイルの第3世代(3G)通信回線しか使えないことの余波にほかならない。3Gがだめなら無線LANでiPadにつなぐ――。iPad向けにmicroSIMカードの提供を検討していたNTTドコモと日本通信は、その道が閉ざされてから短期間でモバイル無線LANルーターの投入を明らかにした。
モバイル無線LANルーターは、3G回線と契約することでどこでも利用できる無線LANのアクセスポイントだ。iPadなどの端末とは無線LANで接続する。ノートパソコンやゲーム機など無線LAN通信機能を持った端末はすべて使え、複数台を同時につなぐルーターの役割も果たす。
NTTドコモも日本通信も、モバイル無線LANルーターは以前から開発しており、偶然この時期の発売になったことを強調する。一方で、日本通信の福田尚久・最高執行責任者(COO)はmicroSIMカードについて、「iPadにSIMロックがかかったことで、しばらくは日本国内で対応する端末が見込めず、出荷を見送った」と言う。日本国内で出荷されるiPadがSIMロックフリーならば、当然iPadの発売に合わせmicroSIMを投入していたはず。モバイル無線LANルーターは、iPadのトラフィックを自社の通信サービスに取り込むための次善の策というわけだ。
NTTドコモや日本通信が提供するモバイル無線LANルーターは、イー・モバイルの「Pocket WiFi」などと競合する。迎え撃つ格好となったイー・モバイルは5月26日から新規契約者のデータプラン(にねんM)などの月額料金を引き下げるキャンペーンを始め、対抗する姿勢を打ち出した。
公衆無線LANはインフラ拡充へ
固定回線にアクセスポイントをつなぎ、無線LANで端末を接続する公衆無線LANサービスにも火が付いた。ソフトバンクは、アップルのスマートフォン「iPhone」やiPadを含むソフトバンクモバイルの携帯端末向け公衆無線LANサービス「ソフトバンクWi-Fiスポット」のアクセスポイント拡充方針を打ち出した。5月17日にスターバックスコーヒージャパンとの提携を発表し、翌日には孫正義社長が航空会社や飲食店チェーン店など約60社と1万8000アクセスポイントを整備する計画を発表。3Gサービスに加えて公衆無線LANによる経路を提供し、自社の3G網への負荷を軽減しつつ、iPhoneやiPadからのトラフィックを無線LAN経由で自社のサービスに囲い込もうとする戦略のようだ。
ほかの事業者の公衆無線LANサービスでも値下げの動きが広がっている。NTT東日本は公衆無線LANサービスの利用料を月額210円に値下げし、モバイル無線LANルーターのレンタル代金を含めて525円で提供する。KDDIも「au one net 公衆無線LANサービス」を月額315円に値下げする。
NTTドコモとNTT東日本が採用したモバイル無線LANルーターを開発したNTTブロードバンドプラットフォームの小林忠男社長は、「モバイル無線LANルーターが普及したとしても、固定回線を使う公衆無線LANスポットの強化は必要」という。3Gの周波数帯域に制約がある以上、無線LAN端末からのトラフィックを3G回線に流すサービスは常にネットワークの負荷分散を意識する必要があるからだ。ただし「無線LANスポットの具体的な拡大計画はいまのところはない」(小林社長)という。
無線LAN端末多様化の契機となるか
ある関係者は「今回のiPad発売は、一般のユーザーが通信端末と通信サービスの関係を見直す契機になるはず」と指摘する。iPadでは通信端末が主役となり、3G回線内蔵モデルか、無線LANモデルかという通信サービスの選択がユーザーに委ねられたからだ。従来のように通信事業者が主役となり、自社のネットワークにつながる端末をユーザーに選んでもらう方式と見事に主客が逆転している。ユーザーは通信サービスの料金や品質、エリア、別途必要となる通信機器の使い勝手や価格などを比較し、ニーズに合った通信サービスを選ぶ格好だ。
今回のiPadにはSIMロックがかかっているが、SIMロックフリーとなればその選択肢はさらに広がる。日本通信によると、電波法などをクリアした海外製のSIMロックフリー端末を日本に持ち込んで、同社のSIMカードを挿して使う例が増えているという。通信端末と通信サービスが切り離されることで、多様な端末が日本国内で使えるようになる動きはますます広がっていく。
無線LAN、公衆無線LANサービス、ipad、PocketWifi、iPhone、アクセスポイント、ルーター、microSIM
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