8月2日夜、見知らぬ男女11人があるマンションの1室に閉じ込められていた。ドアは内側から開かない。脱出するためには部屋のいたるところに隠されているヒントを見つけ、謎を解き、小さなカギのありかと入手方法を見つける必要がある。「そっちの部屋で何か見つかってない?」「時間ないよ」「ちょっとみんな落ち着こう」……。
点在するヒントを手がかりに制限時間内の脱出を試みる「リアル脱出ゲーム」。その常設型のイベント施設が7月にお目見えし、人気を博している。場所は東京・東新宿に立つマンション。1970年竣工と古いが、異端の建築家として知られる渡辺洋治氏が「軍艦」をモチーフに設計した個性的なデザインが特徴で、今年2月にリノベーションされた。
この「軍艦マンション」の1室を借り切り、3部屋に机や椅子、ソファー、流し台、冷蔵庫といった家具・生活用品を設置。いたる場所に、カード、文字の配列、何らかの道具といった手がかりが置いてあり、それらを合わせて知恵を絞ると、最終的にドアを開けるカギが隠されている場所や、カギを入手する方法がわかる仕掛けだ。
謎の内容はしばらく変わらないため「ネタばれ」はできないが、夏場開催ということもあり、途中、ひやりとする演出も。参加人数は1回、11人で1日4回~5回。制限時間は1時間。これに学生から大人が殺到し、今のところ満員御礼で推移している。8月末までの予約分はほぼ完売で、7日から始まった9月以降の予約も早々に埋まりつつある。
運営はイベント企画やフリーペーパーの編集を手がけるSCRAP(スクラップ、京都)。2007年からリアル脱出ゲームの草分けとして不定期のイベントを開催し、これまでに延べ5万人以上を動員。今夏、初めて常設型に挑戦した。ディズニー、集英社、日立製作所といった企業からもひっきりなしにイベント企画の依頼が舞い込む、「謎」の知られざるプロ集団である。
■東京ドーム史上最短の撤収時間
「カラオケ・ボーリング・ダーツ・ビリヤードとあるけれど、ここ25年くらい新しい大人の遊びが開発されていない。次を考えないと。リアル脱出ゲームこそが、次なんだと思っています」
個性的なファッションに身を包み、自らイベントの司会進行役も務めるスクラップの加藤隆生社長は、こう期待を寄せる。もともと脱出ゲームは、04年頃からネット上や携帯サイトなどで人気が出たビデオゲームの新ジャンル。京都でフリーペーパーを発行していた加藤社長が「リアルのイベントにしたらおもしろい」と思いつき、京都を皮切りに、イベント興業を始めた。
08年に大阪、09年には東京へ進出。口コミで人気が広がるにつれ、1開催あたりの参加者は3桁から4桁へと増えた。ついには10年12月、東京の明治神宮野球場を貸し切り、4日間で1万2000人を動員するまでに。チケットは2800円。3360万円の売り上げだ。
今年5月に東京ドームを3日間貸し切って行ったリアル脱出ゲームのイベントには、1回あたり約1200人、10回で計1万2250人が参加した。といっても大がかりな仕掛けを用意したわけではない。加藤社長いわく「スタッフは30人ほど。準備はドーム内にパネルを20~30枚張るだけで、撤収はわずか40分。東京ドーム史上最短の撤収時間をたたき出した」
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