「ポンパレはグルーポンのコピーなのか別物なのか。何が違うのか」。今年1月末、ポンパレ事業を仕切る北村室長に詰め寄ると、北村室長はこう返した。
「装置としては一緒だから、コピーのように見えるかもしれない。ただ、動かし方がぜんぜん違うと思っている。中長期的にちゃんと業界を活性化するという視点に立って、何をやるべきで何をやってはいけないか、さんざん議論を尽くした。その結果、やらないと決めていることがある。それが数あるクーポンビジネスのなかでもポンパレの特徴を決めている、と思っています」
リクルートがクーポン共同購入サイトへの参入を検討し始めたのは、10年初めのこと。米グルーポンが火をつけた「フラッシュマーケティング」という新たなビジネスがいずれ日本に上陸するのは目に見えていた。リクルートにはすでに、ホットペッパーというクーポンビジネスがある。ヘアサロン、ネイル、エステなど女性向けサービスに特化した「ホットペッパービューティー」という姉妹サイトもある。当然、対応を迫られた。
リクルートには、ホットペッパーやホットペッパービューティーのほかにも、クーポンになり得る旅行商品を扱う「じゃらん」、教育・学習関連情報の「ケイコとマナブ」といった媒体がある。それらを横断的につなげたビジネスユニットのもとにポンパレの開発チームが置かれ、まずは徹底的に米グルーポンのビジネスモデルを研究した。そのときにチームが着目したのは、これまで累計で何ドル割り引いたかを示す「Total dollars saved」という表示だった。
■不出の「ポンパレ憲法」、かかわる全員が携帯
どうして売れた総額ではなく、割り引いた総額を出す必要があるのか。思案の末、北村室長はこう思い至った。「米国でクーポンサイトが発達したのは、まずリーマンショック以降の消費の冷え込みがあったからではないか。一般大衆の消費カルチャーが『お得に賢く暮らした方がクール』というように変わった。その背景があって、割引総額を強調する必要があったのかなと」
これだけお得。その強調は、消費者にとって魅力に映り、掲載店舗にとっては一挙に大量の新規顧客を獲得できる魔法の呪文にもなる。だが半面、割引競争をあおり、デフレを加速させる魔の呪文となってしまう危険もはらむ。割引競争にはまった業界は自滅しかねない。当時、開発チームの面々は、こんな話をしていたという。
「下手をすると焼き畑ビジネスになりかねない」「行き過ぎるとフラッシュじゃなくて、“クラッシュ”マーケティングになっちゃうよ」「薬の使い方を考えなければ、毒にもなるよね」――。フラッシュマーケティングの「危うさ」を認識したポンパレの開発チームがまず確認したのは、「断る勇気を持とう」ということだった。北村室長は、こう説明する。
「たとえお店が『500枚出したい』と言ったとしても、明らかに店舗がこなせない枚数だったら、ちゃんと断って『200枚で我慢しましょう』と言える勇気を持とうぜ、と確認した。当然、僕らとしては500枚まるまるもらえたらうれしいけれど、通常営業を圧迫してまでクーポンを売ったら、クーポンサイトだけが丸もうけする結果になってしまう。それだけはやりたくないねという話をずっとしていた」
「断る勇気」は店舗のためでもあり、消費者のためでもある。購入者が殺到した結果、商品が届かない、あるいは予約が取れないという羽目になれば、悲しむのは消費者だ。激しい議論の末、開発チームはこの文言にたどり着き、フラッシュマーケティングの市場に参入した。
「そのチケットはあなたの親しい人におすすめできますか」――。
北村室長が「すべてのベースとなる思想」と言うこの文言は、社内で「ポンパレ憲法」と呼ばれる小さな冊子に書かれ、ポンパレの企画や営業にかかわる全員に配布された。そして、このポンパレ憲法を念頭にリクルートは約半年のあいだ手数料を無料とし、事例を重ねてきた。
■既存媒体にはまらない「新領域」の業種に可能性
その結果分かったのは、やりようによっては消費者、店舗、そしてクーポンサイトが「3者3得」の関係を築くことができる、ということだという。なかでも、リクルートが注目しているのが、社内で「新領域」と呼んでいる業種のクーポンだ。
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