昨年末、福島市の映画館フォーラム福島で開かれた「Image.Fukushima」に出かけた。イメージ.フクシマ、つまり福島を想像すること。そのための映画とトークを組み合わせたプロジェクトだ。昨夏に福島で始まり、東京と金沢を巡り、再び福島に戻ってきた。
今回は2本立て。福島第1原発から20キロ圏内の警戒区域にかかる南相馬市の江井集落の避難者たちを取材したドキュメンタリー「相馬看花」(松林要樹監督)と、原発作業員らの群像劇「生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言」(森崎東監督、1985年)。
手法も年代もかけ離れた作品に共通するのは、原発というモチーフだけではない。悲しみや苦しみを抱えながら、たくましく生きる人々の姿を、両作はそれぞれ映し出す。
父母の実家が福島第1原発に近いという観客が上映後に問いかけた。「岩手や宮城は復興に向かっている。福島は違う。(避難者らの)怒りはどう扱ったのか」。松林監督は言葉を選ぶように丁寧に応じた。「みな怒りを笑いに転化していた」
実際、深刻な現実にもかかわらず、スクリーン上にも館内にも笑顔の広がる場面は少なくなかった。例えば、警戒区域内の自宅に妻とともに残る高齢の男性が「いいんだ、酒さえあれば」と顔をほころばせつつ日本酒のビンをなで回すしぐさに、観客もまた笑いを抑えられない。
もちろん、カメラはリアルに事故の爪痕をとらえている。避難所で被災者と寝食を共にした監督の澄んだまなざしは、ほとばしる深い絶望を見逃さない。原発20キロ圏内にある小高神社。かつてここで結婚式を挙げたという田中久治さんが、桜咲く境内で手を合わせて声を震わせる。「早く安心して住めるような街に……。お願いします」
トークの最後、久治さんの妻で市会議員でもある京子さんが訴えた言葉にも胸を突かれた。「江井は産業廃棄物問題もあり、環境を守る意識はどこよりも強い。そのことを心に留めておいてほしい」
一方の「生きてるうちが花なのよ~」は、くしくも昨年他界した名優の原田芳雄さんが、原発を転々と渡り歩く元労働者のヤクザを演じている。
70年、米軍統治下の沖縄で米兵の交通事故をきっかけに民衆が米軍車両を焼き打ちした「コザ暴動」の混乱のなか、パスポートを持たずに沖縄を離れ、まさに根無し草として日本各地で原発労働に従事してきたという設定だ。
「福島第1」でも働いた。放射性物質に汚染された脚を引きずり歩く彼やその仲間たちは痛ましい。が、ひたむきに前に進もうとする。その姿は、今の福島に生きる人たちとどこか重なる。
福島県郡山市出身の映画批評家でImage.Fukushima実行委員会会長の三浦哲哉さんは「福島は沈黙を強いられている」と語った。「自分の意見を言うと誰かを傷つけてしまうかもしれない」と。
避難の是非など様々に考えがあり、ときに家族さえ引き裂かれる。「せめて映画館の中だけでもオープンに議論ができれば」との思いが一連のプロジェクトの原点にある。
「正解はない」と三浦さん。映画が現実を変えられるわけでもない。しかし、何はなくとも、まずは福島に思いをはせ、語り合うこと。つつましくも誠実な営みを続ける映画人たちがいる。(舘野真治)
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