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ノーベル賞欠席、比が背負った十字架(アジアBiz新潮流)
マニラ支局 遠西俊洋

2010/12/27 22:08
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 フィリピン政府は10日、ノルウェーのオスロで催された中国の民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授賞式を欠席した。8月に発生したバス乗っ取り事件で、香港からの観光客が犠牲になったことへの配慮が要因に挙がる。アジアの民主国家を自負してきたフィリピンだが、実利優先と取れる行動が、投資の面などへの新たな影響を生む可能性もある。

 ロシア、キューバ、ベネズエラ、ベトナム……。ノルウェー・ノーベル賞委員会が発表した授賞式欠席国は、政権に権力が集中し、民主化の点で問題を指摘される国が名を連ねた。中国と南沙(スプラトリー)諸島を巡って対立するフィリピンの欠席は、意外感さえ与えた。

 フィリピン政府は人権を擁護していないわけではないと説明、総合的判断との見解を示すが、バス乗っ取り事件への配慮を隠さない。犯人の元警官がマニラ首都圏で、観光バスの乗客を人質に復職を要求。警官隊は制圧に手間取り、香港からの8人の命が失われた。直後、アキノ大統領は笑みを浮かべ記者会見に応じる。事件現場のバスの前で、警官らが記念撮影に興じた。

 香港や中国から批判が続出し、香港中心部での追悼デモには約8万人が参加した。香港政府は事件直後から、フィリピンへの渡航自粛を勧告。比政府は事件を受け、香港や中国からの訪問客10万人が減るとの見通しを示した。メイドなどとして働くフィリピン人就労者の雇用なども含め、フィリピンは経済的結びつきの強い香港や中国との関係を早期に修復する必要に迫られた。

 フィリピンは第2次大戦後、米国統治を経て独立。マルコス長期独裁政権の時代はあったが、アジアの民主国家として歩んできた。1986年の「ピープルパワー革命」ではアキノ大統領の母、コラソン・アキノ元大統領が指導者となり、マルコス政権を倒した。最近ではアキノ大統領が、11月のミャンマー総選挙について「包括的でない」と軍事政権に批判的な姿勢を示した。

 中国からの報道などによると、フィリピンは授賞式の時期、中国から兵たん分野の軍用品を調達することで合意したという。授賞式欠席の効果が早くもあらわれたかたちだ。一方、香港政府は13日、フィリピンへの渡航自粛をあらためて勧告した。フィリピン政府には、驚きと落胆が広がった。

 フィリピンの株式相場は、海外投資家からの資金流入などで、2009年末比30%超の上昇という高水準で推移する。11年は、アキノ政権の当面の経済政策の目玉である官民パートナーシップ(PPP)によるインフラ開発の優先10事業の入札が始まり、外資もこうした事業に参加する見通しだ。

 ただ、フィリピンがつきあう国・地域は香港と中国だけではない。ノーベル平和賞授賞式への欠席は、他の国々から「民主国家の看板に偽りあり」と受け取られかねない。さらに、ある事件で生じた責任を全く異なる行為で補おうとする姿勢には今後、投資の際に不信感を抱かれたり、思わぬ形でつけこまれてしまう懸念はくすぶったままだ。

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