日米両政府の間で先週始まった日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を巡る事前協議。キックオフ会合の会場となった米ワシントンの米通商代表部(USTR)ビルの前には、2時間に及ぶ日米政府高官の議論の内容を取材しようと、20人近い報道陣が集まった。
ただ、その全員が日本メディアで、米報道陣の姿は皆無だった。USTR関係者は「ノーコメント」とにべもなく、取材に応じたのは日本の外務省局長だけ。それも米側の反応を気遣い「詳細は後ほど」を連発、当たり障りのないコメントの域を出ない。出ばなから日米の温度差を感じずにはいられないシーンを見せられた気がした。
そもそも今回の協議が注目を集めたのは、米自動車業界団体が「日本市場は閉鎖的」と主張し、強硬な姿勢で市場開放を迫ると目されたからだ。日本側にも「根拠のない主張。日本市場はオープンであり、輸入車を制限する規制も慣行もない」(日本自動車工業会)と強い反発を呼んでいる。
かつての日米自動車摩擦をTPP交渉に舞台を移して再現するかのような展開。ところが、米自動車大手交渉筋の声に耳を傾けると全く違ったホンネが聞こえてきた。
「今さら需要が伸びない日本市場を開拓しようという考えはない。決断できない日本が交渉に参加することで、TPPの枠組み自体の完成が遅れるリスクを排除したい」
日本に開国を迫っているのは、日本にTPPに参加させないためのビーンボールといったところか。日本抜きでTPPを早急にまとめ、新興国進出を急ぎたいのが自動車業界の真意だという。TPP交渉に余計な時間と労力を割きたくないという自動車業界の消極的な姿勢が、米メディアの無関心にも現れているのかもしれない。
同じく日本に市場開放を迫りながら新興国開拓を急ぐ米農業はどうか。「日本のTPP参加は米国の農産品輸出に良い効果がある」(米国穀物協議会=USGCのドール会長)と、自動車とはスタンスが異なる。カーギルなど米四大穀物メジャーが世界の穀物取引で圧倒的な存在感を持つだけに、先行きが読めない日本の“決断”をじっくりと待つだけの余裕があるのだろう。
日本では外交が話題となる自動車。ウォール街の目はどうか。16日に2011年10~12月期決算の発表を控える米ゼネラル・モーターズ(GM)。市場関係者の関心は赤字続きの欧州事業の止血に集まっている。英バークレイズキャピタル証券アナリストのブライアン・ジョンソン氏は直近のリポートで「欧州での多難なリストラなどを経てGMは前進するだろう」と分析。やはり、というべきかTPPへの言及はなかった。
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