地震、津波、原発事故の複合災害となった東日本大震災。被災地で日々取材を続けている記者たちの思いをつづります。日本経済新聞 電子版の登録会員の方はログイン後、コメントを書き込むことができます。登録されていない方は、会員登録をお願いします。
福島県郡山市で、昨年12月にできた子どもの屋内遊び場「ペップキッズ郡山」が盛況だ。週末の夕方に訪ねたら、中は熱気と歓声が満ちていた。

休日は1800人近くが訪れる「ペップキッズ郡山」
この施設は、スーパーのヨークベニマルが無償で提供した倉庫(床面積2600平方メートル)を首都圏の企業も協力してつくり替えたものだ。青いゴムボールを敷き詰めたプールや屋内砂場など見慣れない遊具が並ぶ。フランスやチェコからの輸入品で、砂場の砂は岐阜から運んで抗菌加工したという。建物自体の造りは簡素だが、内壁には暖かい色調で大きな木も描いてあり、子どものために最良の空間を作り上げようとした配慮がうかがえる。休日には1600~1800人が利用し、昼すぎには整理券がなくなる。訪れた人は1月末までに5万人強に達した。
はしゃぐ子どもたちと、人情味がある郡山弁で声をかける親たちの熱気を目の当たりにして、町でみかける子どもが少ないのに改めて思い至った。11歳と3歳の子どもを連れてきていた主婦に聞くと「なるべく外で遊ばせないようにしている」という。屋内遊び場の盛況は、子どもと母親が家にこもらざるをえない難しい現状を映している。
郡山市は、警戒区域と計画的避難区域を除くと、福島市と並び放射線量が比較的高い。被曝(ひばく)を恐れて転出する人が出て、市の人口は「震災前から今年1月初めまでに約7400人(約2%)減った」(郡山市)。住民票を移さずに転居している人もいて、実際はもっと減っているとみられている。中心市街地は寒さの厳しさもあって休日でも人通りが少ないが、とりわけ小さな子どもを連れた家族を見るのはまれだ。7歳と1歳6カ月の母親は「心配な状態がいつまで続くのか。わからないのが困る」と話していた。
福島県ではこれから除染が本格化するが、放射線量をある程度は下げられても、どこまで取り除けるのかは読み切れない。高い線量に害があるのはわかっていても、「低線量の影響は科学的にわかっていない」(日本学術会議)。市民は見えない放射能と影響に困惑している。
子どもたちの明るさと「地元の役に立てるのが幸せ」と新たな遊び場づくりを模索する経営者ら大人たちの心意気が救いになるが、外で心置きなく遊べるようになるまで、かなり時間がかかりそうだ。せめて、最先端の遺伝子工学などで低線量と健康の因果関係の解明を急ぎ、安全かどうかの線引きだけでも早くできないものだろうか。(佐藤敦)
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