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ソフトバンク夏モデル、ツイッターの先のアプリ戦略
ジャーナリスト 石川 温

2010/5/20 9:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

「ツイッター」対応の携帯電話を発表するソフトバンクモバイルの孫正義社長(共同)

「ツイッター」対応の携帯電話を発表するソフトバンクモバイルの孫正義社長(共同)

 ソフトバンクモバイルは18日、2010年夏モデルの新製品を発表した。計14機種にミニブログ「Twitter(ツイッター)」機能を搭載。発表会のもようもTwitterや動画配信サービス「Ustream(ユーストリーム)で中継してユーザーの声を壇上で紹介するなど、まさにTwitter一色の発表となった。

 孫正義社長は昨年末にTwitterを始め、ユーザーの声を聞いてエリア改善や新サービスを直接指示するなど熱心に使いこなしている。発表会でも「Twitterによってライフスタイルが変わった。中国出張したときもツイートし、朝起きてすぐにTwitterを見て、風呂に入るときもツイートしている。楽しいし、仕事にも役立つ」とべたぼめだった。

 そんな思い入れを大胆に反映したのが今回の夏モデル14機種だ。Twitter用のウィジェットやアプリをあらかじめ備え、一般的な携帯電話で手軽にTwitterを始められるようにした。

初心者から中級者をカバー

 搭載するのは「twinaviウィジェット」「Twitterウィジェット」「TweetMe for S!アプリ」の3種類。twinaviウィジェットは初心者向けでアカウント取得の機能は持たず、有名人や様々なカテゴリーのつぶやきを閲覧する用途に絞った。Twitterウィジェットはアカウントを取得して、つぶやけるようになっているが機能は限定的。TweetMe for S!アプリは写真投稿など一通りの機能が使えるようになっている。

新製品の携帯電話を発表するソフトバンクの孫社長(左)と上戸彩さん(18日、東京都港区)

新製品の携帯電話を発表するソフトバンクの孫社長(左)と上戸彩さん(18日、東京都港区)

 ソフトバンクモバイルはこの夏モデルでTwitterの初心者から中級者をカバーし、上級者には「iPhone」をさらに普及させるという構図を描いているもようだ。端末本体の性能競争が一段落し、メーカーが複数の通信事業者に端末を供給する「マルチキャリア化」を進めるなか、ハードウエアで他社と差を付けることは難しくなってきている。孫社長はそうした状況変化を先取りするように、「他社はハード面の新製品発表会。我々は新しいライフスタイルをトータルで提供することを目指す」とアピールした。

 ただ、関係者から話を聞くと、今回のTwitter戦略は、時間をかけて入念に準備したものではなく、短期間で一気に仕上げたもののようだ。あるメーカー関係者は、「実際にTwitterウィジェットの搭載が決まったのは数カ月前。それからあわてて載せる準備をした」と説明する。

 実は、この関係者には今年2月下旬にも会って話をしている。その際に「孫さんがTwitterにハマってますね。もしかしたら、携帯電話にもウィジェットを載せろなんて言い出すんじゃないですか」と尋ねると、答えは「確かにありそうですね。でも、まだ何もソフトバンクモバイルから言われていません」というものだった。それが事実だとすれば、Twitter対応の準備が始まったのは、どんなに早くても2月下旬以降だったことになる。

他のiPhoneアプリも移植

ソフトバンクが発表したツイッターを利用するためのソフトが使える防水の携帯電話(18日、東京都港区)

ソフトバンクが発表したツイッターを利用するためのソフトが使える防水の携帯電話(18日、東京都港区)

 通常、新機種の企画は発売の1年半以上前からスタートする。ソフトバンクモバイルの端末も当然、ハード面ではそれくらい前から準備が進んでいるはずだ。しかし、「夏モデル発表会をどう見せていくか」という大詰めの段階でにわかにTwitterが浮上したにもかかわらず、一気に14機種に展開してしまう早業は、トップダウンで社内もメーカーも動かせる孫社長ならではだ。もちろんソフトウエアによる機能追加という比較的時間のかからない開発だからではあるが、仮にNTTドコモやKDDIが同じことをやろうとして、どこまでできたか。

 今回のTweetMe for S!アプリは、iPhone向けの人気アプリをソフトバンクモバイルの「S!アプリ」用に移植したものだ。開発元のフライトシステムコンサルティングは東証マザーズ上場のシステム開発会社で、ソフトバンクモバイル関係者は「日本の会社だからこそ話が早く進み、このタイミングでの搭載が可能になった」と語る。

 今後はiPhone向けで人気のある他のアプリもソフトバンクモバイルのS!アプリ向けに移植させていく計画という。社長自らTwitterに参加して、トレンドと見るやすかさず端末に反映させられるスピード経営のソフトバンクモバイルだけに、他社も追いつくのは大変になるだろう。

スマートフォンへの切り替え計画

 ソフトバンクモバイルの夏モデルでもう1つ目を引くのは、スマートフォンが「まったくない」点だ。NTTドコモは3機種、KDDIも6月に2機種の発売が控えているが、ソフトバンクモバイルは今後の予定が皆無となっている。これは、5月末に多機能携帯端末「iPad」の発売があり、さらに6月に発表されると噂されているiPhone新機種という本命があるのだから当然でもある。孫社長も「(スマートフォンがないことは)特に理由はない。たまたま端境期だっただけ」とかわす。

 ハードではなくライフスタイルを提案すると宣言するソフトバンクモバイルにしてみれば、アプリやウィジェットを簡単に載せられるスマートフォン化の流れはなんとしても加速したいところだろう。

 ソフトバンクモバイルは、米ベライゾン・ワイヤレス、中国チャイナモバイル、英ボーダフォンの日米欧中4社で、モバイルウィジェットの世界的流通を目指したジョイントベンチャーJoint Innovation Lab(JIL)を始動させている。ソフトバンクモバイルは、上位モデルをグーグルの携帯OS「Android(アンドロイド)」をベースにしたJIL対応スマートフォン端末に一気に切り替えるもくろみがあるとみられる。

年末に間に合うか

ソフトバンクが発表したガンダムのプラモデル30周年を記念した携帯電話(18日、東京都港区)

ソフトバンクが発表したガンダムのプラモデル30周年を記念した携帯電話(18日、東京都港区)

 しかし、メーカー関係者によれば「ソフトバンクモバイルはやる気だが、他の通信事業者の動きが鈍く、計画は思うように進んでいない。今年の年末モデル以降でJILの展開を一気に進めようとしているようだが、足踏みしている」と内情を明かす。

 米欧中の大手3社と組んだJILであるが、一方で今年2月には世界24社の通信事業者が共同でWholesale Applications Community(WAC)を設立している。こちらも携帯電話向けアプリケーションのオープンな開発環境や端末に依存しないアプリ提供環境を世界規模で展開することを目指しており、多くの携帯電話事業者はJILを横目にWACの成り行きに注目している(ちなみにソフトバンクモバイルもWACに参加している)。

 携帯アプリのプラットフォームが統一化に向かうのは当然の流れだが、いますぐどの仕様を採用するか決める必要はなく、しばらくは様子を見た方が賢明との判断だろう。孫社長は「着々と新たなビジネスモデルを準備中。WACとも提携をして話を進めているが、まだ具体的に話せる段階ではない」と語る。

 JILは孫社長肝いりのプロジェクトであり、ソフトバンクモバイルの将来をかけた戦略事業に育つことを期待している。だが、ベライゾンなど他のメンバーとソフトバンクモバイルの温度差も相当にあるようだ。

 今夏商戦ではTwitterという目玉をなんとか用意した孫社長。年末モデルでは果たして、JILを売りにしたスマートフォンを新機種の主軸に並べることができるのか。孫社長が世界を相手にどれだけ腕力を発揮できるかが注目される。

石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経Trendy」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦」(技術評論社)など。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226


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